Rein’s blog

フィギュアスケートに関する英語記事の和訳を中心に載せています。無断転載はおやめください。

宮原知子選手の現役引退に寄せて(Apr.22.2022)

2022年3月26日、彼女の24歳の誕生日に宮原知子選手の現役引退が発表されました。

 

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土曜の昼、ベッドでスマホを眺めていたところ、「@55satokoが投稿しました」というインスタグラムの通知が鳴り、予感を抱えながらすぐさまアプリを開きました。

 

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「現役引退」の寂しさ、悲しさと「今の私に悔いはありません」「すでに未来への夢がある」という嬉しさ、達成感。インスタグラムの投稿を見たときにはそれらの感情がぐちゃぐちゃに混ざり合っていました。発表されてからほとんど半日も泣いていました。言葉に出来ない気持ちは涙になって落ちていきました。

 

ここ2シーズンほど、現役引退をずっと覚悟していました。いつ彼女がその決断をしても自分が後悔しないよう、現地に行ける機会は逃さぬよう決めていました。そして、いつかは誰しも引退するということは分かっているつもりでした。それでもすぐに受け入れることは出来ませんでした。

大好きなスケーターがもう競技の世界にいないことはとても寂しいものです。先日発表された、スケート連盟の強化選手リストにも彼女の名前はなく、現役引退を少しずつ実感していくのだろうと寂しくなりました。とにかく、それくらい好きなスケーターでした。

 

たまたま動画サイトに上がっていたノービス時代の演技を見て、それからずっと大好きでした。名前を覚えて、ネットで必死に調べて、翌シーズンのJGPSをリアルタイムで見られたときの喜びは今でも忘れられません。どういうところが好きなのか、なぜ好きなのか、当時は全く言語化出来ませんでしたが、「惹かれる」とはこういうことなのだろうと子どもながらに感じていました。

初めて見たときからもう12シーズンも経ってしまいましたが、そのときに感じた「好き」という気持ちがなにひとつ変わることなく、彼女を応援できたことを本当に嬉しく思っています。

彼女は「昔の自分に声をかけるとするなら、こんなに楽しいものを見つけてくれてありがとうと言いたい」と言っていましたが、わたし自身も昔の自分にそう言いたいと心から思っています。

 

応援し始めてから、嬉しいこと、苦しいことなどたくさんのことがありました。2017年の全日本、2018年の平昌五輪の演技は死ぬまで忘れることのない思い出になりました。間違いなく、人生でいちばん幸せな思い出です。多種多様なジャンルを滑りこなし、新たな道を開拓していく逞しい姿も誇らしかったです。彼女がずっと跳びたいと願っていた3Aも目の前で見ることが出来ました。わたしが彼女に抱いた勝手な夢は、すべて叶いました。

 

もちろん、苦しかったこともありました。2013年の世界ジュニア、2017年の疲労骨折。疲労骨折が治っても、体調不良やアイスショーでの捻挫等が続きました。思うように滑ることが出来ない彼女の気持ちを思うと、とても辛かったです。

そして、2021年の世界選手権もまたその苦しい思い出のひとつです。日本に帰ることが出来ず、全日本のために帰国してからは拠点のトロントに帰ることも出来ず、デトロイトで練習した1ヶ月もとても調子が悪かったと語っていました。点が継ぎ目なくきれいにつながって、一本の線のような演技が、ほどけていってしまったように見えました。なにより苦しかったのは、その演技内容ではなく彼女の発言や表情でした。2019-20シーズン以降は自信を失くしてしまうことがあったように見えますが、このストックホルムワールドではそれまでの比ではないくらい、自信を失ってしまっていたように感じました。引退会見でも、「こんな出来なら辞めてしまったほうが良いと思った」と語っていました。わたし自身も、あなたは自分が思っているよりずっと素晴らしいスケーターなのに、と苦しい気持ちでいっぱいでした。

オフシーズンにはBlooms on Ice、Stars on Ice、Fantasy on Ice、Dreams on Ice、THE ICEと精力的にアイスショーに出演していましたが、なかなか調子は上がらず。転機は、8月のげんさんサマーカップとFriends on Iceだったでしょうか。2013年の近畿ブロック以来のローカル大会出場となったサマーカップでは、SPはミスがあったもののフリーですべてのジャンプを着氷して見せました。トスカの気高さを余すことなく全身で表現した演技に、「宮原知子が戻ってきた」と、そう思いました。FOIではトスカで3Aに挑戦するなど、気持ちに余裕が戻ってきたように見えました。引退会見でも、「辞めてしまった方が良い」という気持ちから「これだけやり切ったから辞めても良い」と思えるようになったと語っていました。

 

ストックホルムワールド後のインタビューで、彼女は「最後のピースがなかなか見つけられない」と話していました。わたしが勝手に推測するに、最後のピースは「楽しんで、自分の足で滑る感覚」だったのではないかと思いました。GPSスケートアメリカのSP後のインタビューで、「初めて最初から楽しく滑ることが出来た」と涙を流すシーンがありました。SPは完璧な出来とは行かなかったけれど、その感覚にはきっと大きな意味があるのだろうと漠然と感じました。全日本のインタビューでも出場選手への賛辞を伝えつつ、「自分の足で滑ることが出来た」と言葉を紡いでいたのが印象的でした。

おそらく、その感覚を、最後のピースを見つけられたからこそ現役を引退したのではないかなと思います。彼女の「悔いはない」「やり切った」という言葉が本当に嬉しいです。ファンとしてもやり切った、応援し切った気持ちでいっぱいです。

 

そして、彼女は人生の第二幕としてプロスケーターを選び、そのはじめての舞台がSOIでした。ジェフリー・バトル振付のフレンチポップ"Voilà"、小㞍健太振付の宗教音楽"Stabat Mater"と2つの新プログラムを見ることが出来ましたので、簡単にその感想も述べたいと思います。

"Voilà"は、自分で自分を認めていくという曲です。たまたまこの曲を耳にしたバトル氏が「サトコに滑ってほしい」と連絡したとのこと。なぜ、このフレンチポップソングが彼女と結びついたのでしょうか?2021-22シーズンの元々のSPはバトル氏振付の"Lyra Angelica"で、4月下旬に振付をしたとのことです。ストックホルムワールドで自信を喪失していた彼女を知っていたからこそ、そしてその自分を克服したからこそこの曲で滑ってほしいと思ったのではないかとわたしは考えています。緩急の強い、まるで人の心のようなプログラムでした。

"Stabat Mater"は、バレエダンサーの小㞍氏が陸上で振付をし、それを彼女が氷上に出力していくという手法で生まれたプログラムです。神々しく、まさに不可侵、聖域という言葉が思いつくような演技でした。過去のプログラムの印象的な振付が織り込まれており、ファンとして何か報われたような気持ちになりました。いかに彼女のプログラムが愛されているかが伝わってきました。ひとつひとつのポーズがわたしにとって宝物のようです。フリーと同じ4分間のプログラムですが、音楽構造に沿った振付でこだわりが強く感じられました。これからのプロスケーターとしての活躍を確信するような演技でした。

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最後に。

ここまで長く応援させてくださってありがとうございました。本当に大好きな選手でした。

平昌五輪をスケート競技人生の集大成の舞台に選ぶことも出来たと思います。でも続けてくれたおかげで、「さとこチャレンジ」を貫き通してくれたおかげで、わたしたちは何より素晴らしく美しいフィギュアスケートを見ることが出来ました。現役卒業、おめでとうございます。これからもずっとずっと応援しています。大好きです。この先もあなたが幸せでありますように。

 

 

 

宮原知子さん概論 (Dec.12.2021)

こんにちは!

女子フィギュア日本代表の宮原知子(みやはらさとこ=木下グループ)選手について、ファンになってから12年間の思いを綴っていきたいと思います。

 

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今回主に書いていきたいのは、知子ちゃんのプログラムと演技についてです。一人でも多くの方に知子ちゃんの魅力に触れてほしい、その一心でこのブログを書き上げました。24プログラムについて言及しているためとても長くなってしまったのですが、目次を使って好きなシーズンからお読みいただけたら幸いです。

 

 

 

 

2010-11シーズン (ノービスA2年目)

FS : レ・ミゼラブル

振付 : 宮本賢二

わたしがはじめて知子ちゃんを見た年です。めちゃくちゃ可愛いでしょ?

ボーンマス交響楽団"Symphonic Pieces"より「序曲」「民衆の歌」が使われた編曲です。

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当時のノービス選手としては高難度の構成を組んでおり、冒頭に3Lz、後半に2A+3T+2Tや3F+2T+2Loを跳んでいました。全日本Nvでも2A+3T、2A+3T+2T、3F+2Tとジャンプを揃えました。

下はアジアンオープンのプロトコルです。2位の選手に60点差をつけて優勝しました。

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アジアンオープン2010FS

2010年MOIのEX"On the Town"です。

 [ http://sp.nicovideo.jp/watch/sm18440991 ]

この頃から一貫して姿勢が良く、腕の運びも綺麗です。さらに特筆すべきは、12歳にして音がきちんと取れていること。せわしない部分もありますが、それでも凄いです。宮本賢二先生の可愛らしい振付なのにめちゃくちゃ真顔なところが最高です。中1のEX構成が3Lz、2A+3T、3Fとは驚きです。

そしてジュニアデビュー直前、韓国のWorld Dream Skaters on Iceというショーに招待されました。その他のメンバーはボブソロ、タラモロ、スイハン、町田さん、ブレジナレオノワソトニコワなどなど。海外ショーでも臆せず3Lz+3Tや3F+3Tを決めており、ジュニアデビューが待ち望まれていました。

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2008年エイゴンチャレンジカップ(現在オランダで開催されているチャレンジカップのこと)のEX「ピンクパンサー」です。

おそらく、今残っている映像で最古のものだと思います。カワイイ!

https://m.youtube.com/watch?v=RT_Yw_jtJ0w ]

 

 

2011-12シーズン (ジュニア1年目)

SP : ポル・ウナ・カベサ

振付 : 宮本賢二

https://youtu.be/GAuD9PJqq5g ]

実際に知子ちゃんを追い始めたシーズンなのでよく覚えています。ネットニュースやブログ、ツイートをどうにか掘り出してISUのJGP動画に辿りついて喜んでいました。

SPは映画「セントオブウーマン」より有名タンゴの「ポル・ウナ・カベサ」です。

このシーズンは単独指定ジャンプがルッツだったため、3F+3Tを跳んでいます。

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0:11〜0:16のターンが効果的に使われていますね。また、CCoSpは現在の構成とは反対のCW→CCWで行われています。

テンポが速い曲なので、タメが少なく少やや忙しない印象を受けてしまうのですが、02:07〜02:46のStSqが凄すぎて全部吹っ飛びます。この頃から上半身の動きの豊富さ、体幹の強さ、スタミナが光っていました。

 

FS : マザーグース組曲(マ・メール・ロワ)

振付 : トム・ディクソン

 [ https://m.youtube.com/watch?v=rBVtW8cgU14 ]

全日本SP15位からFS3位、総合6位入賞の伝説のフリーです。なんと、この時まだ138cmだったそうです。

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2011全日本FS



シニア版はChSpから始まるプログラムで、アラベスクのフリーレッグの伸ばし方が音楽の伸び方に流れるようで好きです。

02:05〜02:10の3S前の腕の動きも優雅で良いですね。この頃から指先までの所作はさることながら、腕や肩の動きまできっちり出来ているんですよ。肩甲骨の可動域が広いんですね。

ちょっとこの映像はアップが多くて分かりづらいのですが、足元の揺るぎなさも素晴らしいですね。あとマイムかわいい。素敵なポニーテールシーズンでした。

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2012-13シーズン (ジュニア2年目)

旧SP : ワルツ・春の声

振付 : 宮本賢二

[ https://youtu.be/vLA6MUG_GV8 ]

SPはヨハン・シュトラウス2世の「春の声」です。このプログラムは音の特徴を捉えきれていない印象がありましたが、本人も滑りづらかったのか途中でプロ変更へ。3拍子のワルツって難しいですよね。

音楽が鳴ってすぐのバッククロスロールがまるで踊っているみたいでお洒落。ジャンプの前後にターンを詰め、ワルツらしい華やかな動きも多く入っています。

StSqの01:59のまるでワルツを踊るかのような動作がとても好きです。

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優雅で軽やかな振付が知子ちゃんによく合っていたので、SP変更後にEXにしてくれて嬉しかったです。

 

 

新SP : 白鳥

振付 : カタリナ・リンデン

https://m.youtube.com/watch?v=nSgB33T2qS8 ]

変更後はサン=サーンスの「動物の謝肉祭」より「白鳥」です。

このプログラムは白鳥らしいところが散りばめられていてすごく好きです。02:17〜02:23のStSq後半、アティテュード→CWループの「下を向いていた白鳥がパッと空を見上げる」ような動きが本当に素敵です。腕が白鳥っぽいだけではなくて、体全体で白鳥がどんな動きをしているのかを見せているところが良いなあと思います。全体的に見ても、上体の動きにバリエーションがあり、無理なく体幹を使っています。

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足上げから2Aはよくある組み合わせですが、アンオー(両腕を楕円型に上げる)から跳んでいるのが個人的にお気に入りです。

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彼女は「表現力がない」と言われてきましたが、果たして本当にそうでしょうか?確かに自分の感情を演技にぶつけたり、分かりやすいアピールはあまりありません。しかし、このSPは曲を聴かなくても、衣装ではなく練習着だったとしても白鳥の甘美な佇まいを想像できるのではないでしょうか。彼女の腕は、口でなにかを伝えるよりもたやすく思いを形にできるのです。

 

FS : ロミオとジュリエット / アダージョ

振付 : トム・ディクソン

https://youtu.be/8LTx1cWG3os ]

FSのロミオとジュリエットは言わずもがなフィギュア定番曲ですが、ジョン・ベイレス「ムービー・アルバム」より"A Time for Us, Love Theme from Romeo and Juliet / Adagio"をそのまま使用しています。ピアノのみの楽曲で、定番のニーノ・ロータ版に比べるとほろ苦さを強く感じます。

ローズピンクのベロア衣装がとても可愛らしく、ジュリエットスリーブ(パフスリーブに長袖がついたデザイン)も相まって14歳のジュリエットらしさがよく出ていました。

01:07〜01:10のピアノの旋律に合わせた動きがまず大好き。ターンの鋭さと身のこなしがよく合っています。

スパイラル→ロッカーカウンタースリー3Fから祈るような動き、CCoSpのほどき方もジュリエットらしさが出ていて素敵です。腕のポジションの移行がとても美しく、下ろすときも一度引っ張られるように上げてから下ろすことを徹底していて隙がありません。

StSqもしっかりと音を拾っています。中盤のランジ→ツイズルがお気に入りです。

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ChSq(キャッチフットスパイラルからのイーグル)からの04:48〜04:51のムーブメントも好きです。フリーレッグの伸ばし方が絶品。SAYURIでもちょっと似た動き(2A前)があったかな。

画質が良い全日本版(ChSqあり)をご紹介しましたが、JGPF版(ChSqなし)もおすすめです。

ちなみに、9年後のTHE ICE2021にて田中刑事選手とロミオとジュリエットを滑りました。ディズリーの"Kissing You"に乗せて、「デススパイラルもどき」(知子ちゃん本人談)やリフト、SBSスピンを見せ、さながらペアのようなプログラムでした。原作のストーリーに忠実で、手を繋いでキャンドルを氷の上に置くところから切ないラストの予感が漂っていました。

何が凄いって、知子ちゃんが本当に14歳だったことです。実際には23歳でトスカを熱演するようなスケーターなのに、あの場では14歳のあどけない表情を見せていたんです。思いがけないジュリエットの再演にとても感動しましたし、なにより知子ちゃんの成長を見ることが出来て本当に嬉しかったです。

 

2013-14シーズン (シニア1年目)

SP : 戦場のメリークリスマス

振付 : カタリナ・リンデン

[ https://m.youtube.com/watch?v=siMC4P4SbBI ]

このプログラムは、「戦場のメリークリスマス」(StSq〜LSp)→「ラストエンペラーより"Rain"(3F〜FCSp)→「戦場のメリークリスマス」(2A〜CCoSp)という構成になっており、曲もアレンジ版を使用した素晴らしい編曲です。StSqから始まるプログラムで、最初のジャンプを跳ぶまでなんと1分以上かかるのです。

動き出しが完全に音楽と一体化していて、最初から引き込まれてしまいます。ピアノに沿ったStSqは非常に丁寧で優しく、難しいテーマながらも背伸びしないありのままの魅力がよく発揮されていました。また回転方向の転換がとてもスムーズで、身のこなしの美しさを強調しています。音楽と本人のスケーティング音だけがただただ刻まれる不可侵的で神聖な1分間は、フィギュアスケートらしからぬ魅力にも包まれていたと感じました。

02:29〜02:43の3F前後もシームレスで良いですよね。バッククロスも上半身の動きを入れているので、ただ漕いでいるような印象が薄まります。そして最後のポーズがものすごく良いです。振り向いたと同時に音が止まるので、まるで音楽そして会場そのものを支配しているよう。

シーズンオフにイリヤ・クーリック氏の指導を受け、全てのエレメンツの質が大幅に高まりました。3Lz+3Tも軌道、跳び方を変更し、以前より高さが出るようになりました。それぞれのスピンの回転速度、軸、ポジションすべてが向上しています。

 

FS : ポエタ

振付 : トム・ディクソン

https://m.youtube.com/watch?v=2Y-mwAks9EI ]

ビセンテ・アミーゴの名曲「ポエタ」です。

“Preludio”(3Lz+3T)→キム・カシュカシアン、ロバート・レヴィン「7つのスペイン民謡」より”Polo”(CCoSp〜2A)→”Poeta en el Puerto”(2A+3T〜StSq)→”Poeta en el Mar”(3Lz+2T+2T〜FCSp)という編曲です。

かなりチャレンジングなプログラムです最初のポーズからカッコいい。腕のアラベスクが横から見てもすごく綺麗。CCoSp後の01:27〜01:30の表現が好きです。大きな動きではないんだけれど、腕の持っていき方、顔の上げ方がプロ。ただ上げるのではなくて下を見てタメてから上げます。

01:56〜01:58のアティチュードで魅せつつジャッジへ送る目線が最高!

StSqはゆったりした部分の音楽なので難しそうですが、大きく見えるような振付になっています。3Lz+2T+2Tからは音楽が変わり、クライマックスへ向かっていきます。

手拍子3S!からの!!ChSq!!!すべて音にハマっていてカッコいいし、ゾクゾクします。重心低めフォアクロス→LFIキャッチフット→チェンジエッジしてLFOアラベスクスパイラル!顔をくいっと上げるところも最高!

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そこからFCSpまでの踊りと目力もキレキレです。最後のポーズの余韻の残し方も素敵。見たことない方はいますぐに動画を見てください!3Sからの情熱のラストをお見逃しなく!

四大陸選手権では見事なポエタを披露しPBを更新したのですが、実はSPのあと食中毒になってしまっていたそうです。濱田コーチも「最後まで持つか心配だった」という状況下でも素晴らしい演技を見せました。

 

2014-15シーズン (シニア2年目)

SP : 魔笛

振付 : ローリー・ニコル

https://m.youtube.com/watch?v=AKcpSlIywao ]

記念すべきローリーとの初タッグ。ローリー曰く、この頃の知子ちゃんは「モーツァルトが合う」印象だったそう。

「魔法の調べ」(3Lz+3T〜FCSp)→「ああ、私には分かる」(3F)→ドン・ジョバンニより「レポレッロのアリア」→「きれいな鈴の音」(2A)→「序曲」(LSp)という構成で、3F着氷後に数秒だけ同じくモーツァルトドン・ジョバンニが挟まれています。

魔笛というと音楽の授業で習う「夜の女王のアリア」や「パパパ」が有名ですが、シーンとして印象的な「魔法の調べ」「きれいな鈴の音」、そして序曲と魔笛っぽさ全開の編曲になっています。

表情がすごく良くなった演技ですよね。スケーティングがより美しくなってなんだか瑞々しくフレッシュな演技。ジャンプの軸もより細くなった気がします。

01:48〜02:16の音楽が切り替わったところから3Fの流れも非常に良いです。すべてが自然なので美しい。

02:50〜03:10の流れも良いですね。以前より大きく大胆に、そして精密にステップを踏めています。躍動感も出てきました。

 

FS : ミス・サイゴン

振付 : トム・ディクソン

https://m.youtube.com/watch?v=1RsCxKGipd0  ]

このミス・サイゴンでファンになった方も多いと思います。知子ちゃんとヒロイン・キムの芯の強さがシンクロした名プログラムです。

編曲は、ボーンマス交響楽団"Symphonic Pieces"より「序曲」「火がついたサイゴン」(3Lz+2T+2Lo〜3Lz)→「聖なる鳥」(2A+3T〜3S)→ボーンマス交響楽団"Symphonic Pieces"より 「太陽と月(Reprise)」(ChSq〜CCoSp)の4曲構成です。

ボーカル解禁シーズンということで、知子ちゃんもキムが歌う「聖なる鳥」"The Sacred Bird"のみボーカルを取り入れています。ミュージカルながらも、ボーカルは一部に抑えることでメリハリのついた構成になっています。

冒頭からエキゾチックで、オリエンタリズムをよく表した振付で観客を引き込みます。東洋っぽさがありながらも、小手先の表現に頼ることなく体全体で音楽に乗っているところがとても好きです。

01:27〜01:32の凛とした表情、目線の作り方も前シーズンからの大きな成長と芯の強い女性らしさを感じられます。この凛とした表情と鋭いスケートがあるからこそ、後半との対比をくっきりと描けているのだと思います。

StSqはこれまでよりもかなり大きく見せることに成功していますね。特に02:15〜02:24のパートが好きなのですが、最後のブラケットすごくカッコいい!

そして3Lz〜2A+3Tの間で大きく曲調が変わります。「聖なる鳥」はクリスに妻がいることを知り、息子のために自分はいてはいけないのだと自害を選ぶシーンです。前半の音楽に負けない大きな動きとはガラリと変わった余韻を持たせた儚い動きに変わります。

LSp、3Sとクライマックスを迎え、そこから見せるChSqは…こんなん泣くしかない…肩や背中の可動域が広がり、ただ振付をなぞっているのではなくて表現に深みが出ているように感じます。スパイラルのあとから04:26は上体、目線、指先すべてが完璧。CCW→CW→CCWとバランス良く両回転しているのも知子ちゃんらしい良さだなあと思いました。

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ラストの2A+3Tを決めたあと、アナウンサーの方がすごいとコメントしてくださっているのですが、台本ではなく心の声が漏れたような言い方だったので当時ちょっと泣いたのを覚えています。フィニッシュポーズの顔の上げ方がこれまででいちばん気合が入っていました。

 

 

2015-16シーズン (シニア3年目)

SP : ファイアーダン

振付 : トム・ディクソン

https://m.youtube.com/watch?v=EMYitZ_YGJA ]

ビル・ウィーラン作曲の「リバーダンス」より、1幕の終盤を飾る「ファイアーダンス」です。バルセロナGPFに出場した際には、現地のフラメンコの先生に教えを請いに行ったとか。当時としては宮原知子らしさはないのに、ハマりプロで「プログラムをモノにする力」をひしひしと感じていました。

冒頭ポーズの作り方が素晴らしいです。振り向いた反動でビシッと決めるところ、ダンサーらしさを最初から見せてくれます。

LSpのビールマンへ移行するところ、FCSpのドーナツ→ハーフビールマン→ほどいてStSqへ繋がるところがしっかりとメロディの移ろいと合致していて、スピンにおける音楽表現への意識の高さを感じられます。01:20〜01:29のスピン間も動作ひとつひとつにタメを含ませ、伸びる音や弦を弾くような音に重なる動きが心地よいです。スピン2連続のときも、間に振付がしっかりと入っているところも個人的に好きです!

見せ場の01:46〜のStSq。上半身の可動域も広がったのですが、エッジの伸びも広がったように思いました。もうひとつ凄いのが、腕の動きがめちゃくちゃ多いのに一瞬たりとも雑にならないところ。普通はあんなに踊っていたら肩が疲れて肩甲骨が閉じてしまうんですが、知子ちゃんは常に肩が開いていて、肘の使い方も曲線的で滑らかで、挑発的な目線と首も本場のフラメンコを彷彿とさせます。(見たことないけど)

中でも左足ロッカーカウンターロッカー、右足カウンターロッカーカウンターツイズルの切り返しの速さ、正確さが秀でていると思います。

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02:40〜02:43の3F前の助走はバッククロスではなく、フォアクロスからタップを踏むように進んでいきます。フォアクロス→ウォーレイ2Aも勢いと伸びやかさが同居していてとても良いですね。あんまりフォアクロスって見かけないけれど、ファイアーダンスには絶対フォアクロスなんですよ…!最後のCCoSpの手の使い方も華やかで曲想に合っています。

 

FS : ため息

振付 : ローリー・ニコル

https://m.youtube.com/watch?v=EXLUFQy65f4 ]

フランツ・リストの3つの演奏会用練習曲の第3曲「ため息」1曲のプログラムです。ボレロと同じくらい単調で、ボレロより曲の抑揚がないピアノ曲をFSに持ってきました。このプログラムには「初恋」というテーマがあり、実際にはスケートへの気持ちを表したものだそうです。

プロ発表を聞いた当時はすごく心配だったのですが、夏のショー披露時点で表情や腕の運び、音楽を意識した滑り等すべてが向上しており、知子ちゃんの代表作のひとつになりました。

このプログラムは、17歳の等身大の演技でありそれ以上でも以下でもないところがとても好きです。17歳の今だからこそ出来るプログラムで、今しか見れない儚さがあります。

花が咲くような3Lz+2T+2Loのあとの01:16〜01:22のシソンヌフェルメのような動きが良いですね。そのまま流れるようなブラケットも流麗。

01:38〜01:43のアティチュードのポジションが美しいです。バキバキの背筋も凄いのですが、バレリーナ並にアティチュードの脚が氷面と平行なラインを一瞬で作っているのが本当に凄いです。 

さてStSqに入っていくのですが、01:52〜01:58のツイズル→ループからの天を仰ぐようなポーズがお気に入り!

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SPのファイアーダンスではメリハリが大事なのでピタッ!と止まるポイントが多いのですが、FSではすべてが流動的なんですよね。まるで川のようです。

02:10辺りに滑走部分が入るのですが、曲と上手くマッチさせているのでいい感じに見せています。ローリーはこういうのが上手いですよね。

02:24の3F前のバン!!というところ。実はうちの家族全員で真似していました(要らない情報)。続くCCoSpではあなたがピアノ弾いてるんですね!?となるくらいのシンクロ。

後半の単独3Lzは冒頭3Lz+2T+2Loとは違う腕のプレパレーションなので目を引きます。伸びやかで綺麗。

ChSqの各ポジションに至るまでの過程まで美しいですね。また再度アティチュード・デリエールを使うのも印象的。元々綺麗だった腕の運びがより美しく、柔らかくなりました。知子ちゃんの生み出す曲線は魔法のよう。

 

 

2016-17シーズン (シニア4年目)

SP : ムゼッタのワルツ

振付 : ローリー・ニコル

[https://m.youtube.com/watch?v=8XfOwjtUcNM ]

ムゼッタのワルツはジャコモ・プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」の一曲です。ソプラノのアリア「私が街を歩けば」"Quando me’n vò"として非常に有名ですが、このプロはボーカルを使用していません。

ですが、プログラムを完全に理解するには歌詞・情景のチェックも必要ですから少し見てみましょう。状況としては、恋人のマルチェッロと別れたムゼッタがカフェでマルチェッロを見かけるシーン。そしてマルチェッロが自分と別れたことを後悔するように、自分の魅力を歌う場面なのです。

 

「私が街を歩けば」

私が街を一人で歩くと 皆立ち止まって

私の美しさに見とれるの

そして頭からつま先まで 

じっくり眺め回すわ

(中略)

私のことを忘れられずに

苦しんでいるあなた

どうして私から 逃げようとなさるの

あなたは口にしなくとも

私には分かっているわ

あなたが死ぬほど苦しいってね

 

どうですか?ムゼッタは奔放で超自信満々な女性なんです。2人は結局くっついて別れてを繰り返します。

StSqなどに顕著に出ていますが、上下の動きでも音楽を可視化できるようになりました。解説の荒川さんも同じタイミングで仰っていますが、01:15〜0:19辺りのエッジが深いですね。また空気を含んだような腕の運びもすごく滑らか。

02:32〜02:43の3Loの前後の工夫も素敵です。ジャンプが入っているのに力みが全くないので、作品としての意識をひしひしと感じました。

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ムゼッタのワルツでいちばん好きなところはなんと言ってもFCSpのほどき方です。ハーフビールマン→UL姿勢を通って戻るところが本当に好きなんです。スピンの出までプログラムが詰まってますよね。

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原曲解釈を入れると、もっとドヤっていいんじゃないかとも思うのですがこちらはボーカルのないオケ曲としての使用ですから、優雅さ嫋やかさを魅せるのも良いですね。

 

FS : 惑星〜スター・ウォーズ

振付 : トム・ディクソン

https://m.youtube.com/watch?v=oxsplsGhhZ8 ]

ホルストの惑星とスター・ウォーズサウンドドラックの組み合わせです。斬新で、ものすごくコズミックです。

構成としては、惑星より「金星-喜びをもたらすもの」(3Lo〜FCSp)→「火星-戦いをもたらすもの」(StSq〜LSp)→スター・ウォーズより「レイア姫のテーマ」(3Lz+2T+2Lo〜3S)→惑星より「木星-快楽をもたらすもの」(2A〜CCoSp)という編曲になっています。ただし、有名なフレーズはあまり使われていません。

曲が発表された当初はダースベイダーのテーマを使うのかな?!なんて思っていましたが、さすがにダースベイダーは不採用でした。ヨカッタ

このプログラムは好みが分かれそうだなと思いますが、スケールの大きさや気品に溢れた動きがすごく良いなと感じています。SPが上品で正統派なお嬢さまだとしたら、FSは誇り高き女王。コーヒーを飲むならカフェじゃなくて玉座。喜怒哀楽がはっきりしていて、ほんのすこしプライドが高い、でも愛に溢れた女王ってイメージです。(全部妄想)

01:20〜01:26の3Lz+3T後のうねうねタイムなんですが足までうねうねしてるの何気に凄い。

StSqの入りのループからもエッジが深くなったのがよく分かります!02:03に現れるアティチュードも素晴らしい。ため息のものとは違って軸足をプリエ(膝を曲げるバレエの動き)しているのでかなり雰囲気が違います。同じ動作には見えません。02:11〜02:19の右足クラスター(ロッカーロッカーカウンター)に挟まれたハイキックも火星にぴったりでカッコいい。

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直後のLSpも力強く、軸足の突き刺し方や入りのスピードで迫力に溢れるスピンになっています。ドドドッという音に合わせてビールマンポジションに移行するのも効果的ですね。

ジャンプが続いたあとのChSq、最高です。なんだか感極まったような、喜びに溢れたような表現になっていてものすごく好きです。

ちなみに、スケートカナダではStSqが規定を満たさず0点なんていう珍事件もありました。

 

 

2017-18シーズン (シニア5年目)

SP : SAYURI

振付 : ローリー・ニコル

https://m.youtube.com/watch?v=0qlVhIVju04 ]

SPはSAYURI、Memories of A Geishaのサウンドトラックです。まさかローリーがこんな攻めた編曲をしてくるとは思いませんでしたが、このSPの編曲は知子ちゃんのプロで最も優れたものだと思っています。

"Sayuri's Theme"(3Lz+3T〜2A)→"Brush on Silk"(StSq)→Becoming a Geisha(3Lo〜LSp)という編曲で、"Brush on Silk"はジョン・ウィリアムズ版ではなくアレンジ版です。

0:31のボーンという音とともに足を替えてフリーレッグを伸ばしポーズ。とても印象的です。0:40のアティチュードの柔らかさ、力強さ。ゆったりと姿勢を作りながらも目線と佇まいで訴えるので、ふたつの全く別の表現が共存します。

FCSpをほどいたあとの桜が吹雪くような腕の振付がお気に入りです。CCoSpへの流れも良いですね。

StSqに入るところ、キャッチフット→ロッカーカウンターツイズルループがとても好きです。StSqの始まりにふさわしい、音楽への理解に溢れたクラスターです。バシバシと決まっていくポージングは実にあでやか。特に和風テイストのロッカーがお気に入りです。

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02:27辺りのツイズル→ランジ→トゥステップも良いです。

ラストの右足ロッカーブラケットロッカーからの鋭い振り向きもとても好きです。クラスターを踏みながらも腕が落ちないところもさすがです。

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切れ味の良いエッジワーク、随所に現れる「和」の動き、顔や首のメリハリが効いた使い方など、どれをとっても素晴らしいStSqだと思います。知子ちゃんの歴代StSqの中でもかなり上位に来るクオリティではないでしょうか。

 

FS : 蝶々夫人

振付 : トム・ディクソン

https://m.youtube.com/watch?v=55FtBAOS9nI ]

2度目のジャコモ・プッチーニのオペラ作品です。

3シーズン前にミス・サイゴンを演じたときから、五輪シーズンには蝶々夫人を振り付けることをディクソン氏は決めていたそう。とっておきのプログラムなんですよね。ただ怪我の回復がかなり遅れたことで滑れない期間が長かったので、ディクソン先生は諦めて「もう惑星〜スター・ウォーズでいいじゃん、僕はあれがいちばん好きだし」と思っていたとも語っていましたが…

このプログラムは、オペラでありながらもボーカルは一切なし。バレエ版蝶々夫人とピアノ版蝶々夫人を織り交ぜており、誰とも被らない珍しい編曲です。

ジョン・ランチベリー「バレエ・蝶々夫人」より第3幕「序奏」(3Lo)→ジョン・ベイレス「プッチーニアルバム」より「ある晴れた日に」(3Lz+3T〜FCSp)→ジョン・ランチベリー「バレエ・蝶々夫人」より第2幕「ゴローさん入口へ」(StSq)→コロンビア交響楽団”Puccini without Words”より「ピンカートンの別れ」「蝶々夫人の死」(3Lz+2T+2Lo〜2A)→ジョンベイレス「プッチーニ・アルバム」より「ある晴れた日に」(LSp)となっています。

はじまりのポーズの作り方、特に肘の伸ばし方が最高じゃないですか?あまり安易に言いたくはないんですが、まるでバレリーナ。エレガントで、空気を含んだように柔らかで、どう見てもプリマの肘なんです…

「序奏」に乗せて物語が幕開け、0:47のランジ3Loを降りるとピアノ曲へ。曲調の変化に対する表現もまた素晴らしいのです。蝶々さんがピンカートンと出会って、優しさと柔らかさが溢れていくさまが、顔を上げるところの腕の開き方など一挙一動に込められています。

3Lo〜3Lz+3T〜3Fの間にいくつかホップが隠されているのもお気に入り。蝶々さんの楽しげな様子ですね。スケアメまではスパイラルから3Fでしたが残念ながらスパイラルさんはリストラ。ここの伸びやかな3Fという流れがとても好きでした。

StSqは楽しげで軽快なパート。蝶々夫人というと悲劇の印象が強くなりがちですが、彼女にも幸せな時間は確かに存在していたんです。ピンカートンに出会って、惹かれ合っていくあの時間を「なかったことにしない」知子ちゃんがとても好きだな、と思いました。しっかり音を聴きながら見ると、音を拾い切っていることに気が付きます。

StSqが終わって、音楽も変わると一気に緊張度が上がります。だってこのプログラム、3Lz+2T+2Lo〜2A+3T〜3Sと緊張のジャンプが続くので、いつも死にそうな思いで見ていました。

力強い音楽にも負けないChSq。もうね、全然152cmに見えません。彼女の演技って、とても悪い言い方をするとどうしてもチマチマっとしてしまう部分もあったんですが、もうそんなところは一切ありません。

最後は、0:58〜02:02までを思い出させるピアノに乗せたLSp。まるでオルゴールみたいで、まるで蝶々さんの走馬灯のような儚い美しさをスピンで表現しています。このシーズン、わたしは泣いてばかりだったので基本的にこのLSpをちゃんと見れなかったのですが、「まさに」というエレメンツの配置ですよね。

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蝶々夫人は、シーズンの思い出込みで好きな方も多いのではないでしょうか?わたしは全日本、平昌五輪とガッツポーズ付きの蝶々夫人を現地で見ることが出来きました。あの日の感動は今でも忘れません。

 

 

2018-19シーズン (シニア6年目)

SP : 小雀に捧げる歌

振付 : ローリー・ニコル

https://m.youtube.com/watch?v=ZoVYluqiKzI ]

アベル・コジェニオウスキの「小雀に捧げる歌」"Song for The Little Sparrow"です。

もう8625895268度目なんですけど、始まりのポーズから美しすぎます。

0:25〜0:31辺りのバッククロスに行くまでの腕の動きもやはり絶品。肩甲骨と肘のしなやかさが凄い。また、常に姿勢が良いので動きがさらに映えます。その直後に、右足、左足とフリーレッグを伸ばすのですが、音通りに伸びています。ただ伸ばすのではなくて、なんというか滑りに表情が出て来たなと思いました。

3Lz+3T前の入りは基本的に昨シーズンと同じですが、両手で何かを押し戻すような動作が増えました。着氷後のイナバウワーも素晴らしいんですが、どうしてこんなに上手いんでしょう…特に肩と上体、胸の張り方が最高。

続くFCSpで曲の主題に入っていきます。初めから主題を使わないところ、なんだかすごく好きです。

01:14辺りのダブルバットマンからの腕の動きはまるで鳥が羽ばたくようで印象的。

バレエジャンプからの2Aも音が上がるタイミングで跳び上がっているので納得。そういえばローリーもディクソン先生もバレエジャンプ好きですよね。だいたい入っている気がします。

01:29〜01:31の3段階コレオは中毒性あるので好きです。つい真似したくなる…!2A〜3Fの間の振付が最高すぎてご飯3杯はいけます。表外ジャンプをふんだんに使っているところも良いです。

CCoSp、逆回転はなしなので足変えがめちゃくちゃにスムーズ。そしてクロスフットの手の位置が額のところにあって、01:11のモーションを想起させます。こういう工夫がとても好きです。

StSqは腕と膝の使い方がとても素敵です。素敵すぎてコメントが出てこない…音の高低を体の上下運動でも表していたり、精密に作り込まれた感じがたまりません。

腕も合わせて、音楽が頂点に向かうような左足ロッカーブラケットカウンターロッカーのクラスターがお気に入りです。

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ベスティスクワットを挟んで、シャッセで加速、右足カウンターロッカーブラケットカウンターでも上体やフリーレッグを巧みに使って音楽と調和しています。

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音楽が盛り上がるところでスパイラル、そこから9回転ツイズルで編曲の雑さをも打ち砕きます。締めはLSpなので、とにかく回りまくるフィニッシュ。毎年回転速度を上げてくるのでびっくりします。

始まりから最後まで、本当に一瞬に感じるようなプログラムで、濃密さとナチュラルさが融合しています。美の体現、というイメージ。史上最高傑作です。

このSPはとにかくStSqの変更が多く、ベーシックなUSIC〜全日本版、完全別物バヴァリアンオープン版、StSq序盤に右足クラスターが追加されたワールド版(最後のツイズル前も変更あり)と様々なバージョンがあります。個人的には全日本版が好きです。

 

FS : ブエノスアイレスの冬

振付 : トム・ディクソン

https://m.youtube.com/watch?v=sfpVvaZ1QR0 ]

FSはギドン・クレメールがアストル・ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」とアントニオ・ヴィヴァルディの「四季」を組み合わせた"8 Seasons"より「ブエノスアイレスの冬」です。

黒が白を捕まえる、そんな背徳的ポージングから始まるFS。冒頭に配置した3S、スケアメは軸が曲がり余裕がやや欠けてしまったんですが、始まりと同じ手の掴み方で着氷。まだ静かな中で、何かが動き出すようなゾクゾク感。

3Lz+3Tのあとのホップが音にぴったり。その後の伸びる音に対して、同じリズムで腕を前に出すところもお気に入り。その後のアティチュード・デリエールの目力と表情にも注目。当方、アティチュード大好き芸人なのでこのブログで何度も連呼してますが知子ちゃんはアティチュードのプロフェッショナルです。ポジショニングも完璧ですが、プログラムによっての使い分けの巧さが半端じゃない。

音楽が突然ヴィヴァルディミックスになるところをCCoSpに丸々当てているのもポイント。ディクソン先生の編曲云々ではなく、元々この曲なので上手く使ったなあと感嘆させられます。知子ちゃんはスピンも速いので、音に遅れずぴったり。

RBOキャッチフットスパイラルから3Lo!着氷後の足上げも良いですね。ズバッ!ではなくて曲調にあったゆるやかな上げ方。こういった上げ方のほうがポジションまでの過程が見えるので難しいのですが、安定してどの瞬間も美しいです。

FCSpを終えてStSqに入ります。おしゃれなチョクトーから入るところが好きです。

02:21辺りの音に吸い込まれそうなところとか悶えるくらい好きです。CCWループ→CWループ→クラスターの顔の付け方が!良い!

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3Lz、演技後半に入ってるのにボーナス対象じゃなくてもったいない〜って思っていたんですが、この横に伸びるような音に対しては絶対に幅の出やすい3Lzじゃなくちゃだめだって思わされるんですよね…総じてエレメンツの配置が素晴らしいです。

2A+3TからChSqに行くまでの隙のなさにも敬服します。もちろんクロスもあるんですが、ほかに沢山ハイライトがあるので全然目立たないし、ポジションの作り方と目線がもうなんとも絶妙。

ChSqはアラベスクスパイラル→バレエジャンプ→バックのキャッチフットスパイラルの3本立てなんですが、ここでも目線の配り方とタメの巧さが光ります。このプロのChSqは、今までのものと異なって残り3つのエレメンツを引き立てている印象も受けました。ハイライトではなく、ローライト。終盤3F+2T+2Lo〜LSpの布石というべきか。

余韻を残すような音楽から、03:40を境に勢いが増して曲調がガラリと変わりますが、そこの変化の付け方が上手すぎなんです。

猛スピードから3F+2T+2Loを跳び、スリージャンプ〜2A〜マズルカというあまりにお洒落すぎる流れ。高さの出るようになった2Aを表外ジャンプで挟み、自慢のLSpで締めることで音楽の盛り上がりに負けることなく、ラストにふさわしい躍動感を出せるというもの。

 

 

2019-20シーズン (シニア7年目)

SP: エジプシャン・ディスコ

振付 : ブノワ・リショー

https://www.youtube.com/embed/5r1jiJAPH8A ]

これまでもチャレンジプログラムはありましたが、サトコミヤハラ史上いちばんのチャレンジと言っても過言ではないSPです。そもそも女子選手がヒップホップをスケートで表現するということ自体珍しいことだと思います。なかでも、"Classy"や"Elegant"のイメージが強い知子ちゃんがヒップホップ×リショープロを自ら選ぶとはだれが想像できたでしょう。

このプログラムは"El ShiKo"(3Lz+3T〜CCoSp)、"Yalla"(StSq)、"Tabla and Percussion Solo"(3Lo)、"Egyptian Disco"(FCSp〜LSp)の4曲で構成されています。リショーさんの発想力と編曲力の高さに慄きます。普通はこんな組み合わせ思いつかないですよね…

1曲目のやや気怠げなボーカルと身体の伸びとくねり、粘っこいスケートがよくマッチしていますね。知子ちゃんはかなり鋭いスケートだと感じていますが、この曲では重心をぐっと下げて氷に吸い付くようなスケーティングになっている(イメージとしては宇野昌磨選手みたいなスケーティングです。あくまでイメージですが)ところが素晴らしいです。音楽表現のアプローチとしてスケーティングの質を変える方法を用いることができる選手はそう多くはないと思います。

このプログラムはかなり難易度が高く、1:13〜1:25で足上げから3Lz+3T、そして着氷後にカウンターイーグルを入れています。イーグルの完璧な音取りだけでなく、ターンやポジションの処理速度とそのクオリティも知子ちゃんの魅力です。

そこからベスティスクワットやポジションを挟んで再度足上げから2A、パーカッションに合わせて着氷、からのニースライド亜種を経てCCoSpへ。情報量が多い!多すぎ!!CCoSpのUL姿勢の腕にも工夫があっていいですね。

曲が変わり、StSqへ。ここまでもリショーさんがやりたい放題(いい意味ですよ!)していたのにここから更にスケールアップします。まず2:09〜2:13のロッカーブラケットカウンターのクラスターが音にぴったり!

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ただ音に合わせているだけではなくて、音の長さに合わせてブラケットの溜めを作っているのがすてきです!ついていくだけでもヒイヒイ言いそうなアップテンポで溜めを見せる余裕とそのセンスに惚れ惚れします。

加えて2:20や2:25、2:39での「止める」動きがこのプログラムを最もヒップホップたらしめていると感じます。この動きこそが必然性なのでしょう。

チャリーン3Lo〜FCSpの移行も(そして編曲も)素晴らしいです。ただ素早いだけではなくて、音楽に合った動きで音通りなのが本当に気持ち良い。このフレーズにはこう来て欲しい!という気持ちに必ず応えてくれるのが知子ちゃんです。FCSpもそのままLSpに繋ぐのではなく、ちょっと遊び心を入れてるところも好きです。最後は女王さまのマイム!!

そして嬉しいことに、2020年全日本のMOIでエジプシャン・ディスコの再演がありました。コロナ禍に取り組んでいたダンスレッスンの成果も出て、とても振り切れた演技になっていました!

https://youtu.be/38RJcwrpBXk ]

今振り返っても物凄く難しいプロだと感じますが、このエジプシャン・ディスコで得た動きは翌シーズンのFSトスカによく活かされています。

 

FS : シンドラーのリスト / 鐘

振付 : ローリー・ニコル

https://youtu.be/tPJ682vSHXY ]

シンドラーのリストラフマニノフの鐘を編曲したジョン・ベイレス氏の曲"Theme of Schindler’s List, Prelude in C sharp minor, Hatikva (Intelude) "をそのまま使用しています。COVID-19の感染拡大により世界選手権での披露が叶わなかったことが非常に残念でしたが、間違いなくフィギュアスケート史に残るべき名プログラムだったと思います。もし、まだ映画「シンドラーのリスト」を見ていない方がいたらぜひ先に見てほしいです。

始まりのポーズをほどいた瞬間から1940年代に誘われ、これまでとは一線を画す歪な動きに強烈な違和感を突きつけられます。0:47〜の風が吹くような、人々が運命に振り回されるような振付から0:52の射抜くような視線が印象的です。

冒頭のダブルスリー2A着氷後、だらりと垂れ下がった腕と生気なく上げられた右足のインパクトの強さたるや…演技中の知子ちゃんは振付以外で絶対に腕を肩から下に落とすことはありません。足上げもポジションへの到達を早めてポジションをいかに長く美しく見せるか工夫を凝らしています。そんな彼女が、あえてこの動きをするということに強い意味があると思います。

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静寂の中の3Lo、ポジションの変化がフレーズの変化にそっと寄り添う(CU姿勢→CS姿勢)FCSpを経て、3S着氷後の何かを求めるような振付からStSqへ入ります。同時に、曲もシンドラーのリストから鐘に移り変わっていきます。この編曲で鐘が使われるのは2:32〜3:10のおよそ40秒ほどですが、ここがまるまるStSqに当てられています。ただ抒情的で儚く美しい、それだけの一元的な印象に留まらせないのがこのStSqです。カナダに練習拠点を置き、パワーのついたスケートが鐘によく合っています。

3:48〜4:07の3Lz〜2A+3Tは追い込まれていくような3Lz(この3Lzは助走からジャンプ方向を一切振り返らずに踏み切っています)から、それでも希望を捨てず前向きに強く生きるような2A+3Tの流れが素晴らしいです。唯一前向きに踏み切るアクセルジャンプの特徴を上手く活かした構成で、非常にメッセージ性の高いプログラムであることを再認識させられました。

続くChSqでは映画の主人公であるオスカー・シンドラーの後悔に、映画を観た知子ちゃんの歯痒さがシンクロしています。このプログラムは映画のストーリーを伝えるものではなく、そこに知子ちゃん自身の考えや感情を乗せています。

シンドラーはわたしにとって最も大切なプログラムであり、ジャパンオープンで観た感動を未だ忘れられません。

当ブログと内容が被る部分はありますが、フィギュアスケート同人誌「氷面鏡vol.2」に「宮原知子シンドラーのリスト』は何を語るか」というタイトルで寄稿させていただきました。もしご興味があれば、そちらも併せて読んでいただけたら幸いです。

 

 

2020-21シーズン  (シニア8年目)

SP : グノシエンヌ第1番 / メタモルフォーシスII

振付 : ステファン・ランビエール

SP [ https://youtu.be/0XFWFsRNIcM ]

EX [ https://youtu.be/sOUwH35XA9Y ]

元々2019-20シーズンのEXだったプログラムをSPにアレンジしました。もちろんこのSP版も素晴らしいのですが、EX版こそ皆さんに見てほしいプログラムです。今回はEX版について書かせて頂こうかなと思います。

楽曲はエリック・サティの「グノシエンヌ第1番」とフィリップ・グラスの「メタモルフォーシスII」を組み合わせています。

CaOI2019の実況、解説の町田樹さんによれば、「知識・教育」「経験」「自らの完成」の3つをテーマとして、曲が進むと同時に自分自身が確立されていくプログラムだそう。ひとことで言うと、「自己表現」のプログラムです。

ここまでコンセプトが作り込まれたEXってあまり聞いたことない気がします。(そもそもEXプロの裏側や秘話を聞ける機会が殆どないのですが…)

第一部の「知識・教育」はコンパルソリーから始まるパート。ジャンプとスピンひとつずつ実施します。

3F着氷後の右手が支配的ですごく好きです。まるで、すべてがコントロール下にあるとでも言わんばかり。(ちなみにMOIでは3Fにミスが出て、ステファンに「今日は3Fなんて跳んでないから!」って冗談を言っていました)

音楽に完璧に合わせた表外ジャンプ、続くスピンでは旋律の変化をポジションの変化で表現しています。

1:18からはメタモルフォーシスIIに移行して「経験」のパート。CW、CCWの方向転換が素晴らしすぎて何度もリピートしてしまいます。元々逆回転スケーターだからこそ為せる技なのでしょうか。(濱田コーチに師事するようになってから順回転に修正しました)

誤魔化しのきかないシンプルなピアノ曲に、音を出さず「無駄のないスケート」で向き合っています。音楽がなくても、知子ちゃんから音楽が聴こえてくるような演技ですよね。

第3部の「自己の完成」はどこからと明言されてはいませんが、おそらく2:40以降かと思われます。「知識」があるからこそ、「経験」を深めることが出来て、自分の表現したいものが表現できていくようになり、「自己の完成」に繋がるということです。

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これほど「音楽表現」と「自己表現」に長けたスケーター、そしてプログラムは多くはないでしょう。ただ美しいだけではなく、美しさの先を追求するような内省的な演技であると思います。

このプログラムを通して、これまでの経験すべてが引き出しとなり武器となり、いまの知子ちゃんがいるんだなと感じました。このプログラムは、知子ちゃんの軌跡なんですね。ステファンの知子ちゃんへの愛の深さたるや。ステファンにはいつだってお歳暮を送りたい気持ちです。

 

FS : トスカ

振付 : ローリー・ニコル

https://youtu.be/VMY9t3X2Gl8 ]

トスカは数多くのトップ選手が使用した曲ですが、知子ちゃんにとっては3回目のプッチーニ作品で7回目のローリーとの振付ということもあり、「間違いない」プログラムです。過去イチで長い文章になりますが、2シーズン分ということでどうかお許しください。

知子ちゃんの編曲は「歌に生き、愛に生き」"Vissi d'arte, vissi d'amore"(3Lz+3T〜FCSp)→「星は語りぬ」"E lucevan le stelle"(3F+2T+2Lo〜2A+3T)→ラストシーンの「急いで!起きて!マリオ」"Presto su! Mario!"(StSq〜LSp)と3曲から構成されています。

フィギュアスケートにおけるトスカは、「星は光りぬ」「急いで!起きて!マリオ」のドラマティックな2曲がほとんどのプログラムで使用される反面で、オペラ屈指のアリアである「歌に生き、愛に生き」はあまりメジャーではありません。しかし、宮原知子というスケーターがトスカを演じる上で、「歌に生き、愛に生き」のアリアは絶対条件のようにわたしは感じています。FSの殆ど半分を割き、この曲のみ歌声が入っているのもポイントです。

知子ちゃんはこれまで蝶々さんやキム、ジュリエットなど、ラストで自害をしてしまうヒロインを幾度も演じてきました。トスカがそれらのキャラクターと明確に異なる部分は「人を殺してしまったこと」です。自害する前日にトスカは悪役スカルピア(警視総監)を殺めてしまいますが、知子ちゃんはトスカにしてはやや徳が高いというか、メジャーな編曲のままでは多分スカルピアを殺さないと思うんですよ。

ここで「歌に生き、愛に生き」の和訳歌詞を見てみましょう。第2幕にて死刑囚になってしまった恋人を助ける条件として、スカルピアに自身の身体を要求されたトスカが歌うアリアです。

 

「歌に生き、愛に生き」

歌に生き、愛に生きてきました
命あるものを傷つけたことはありません

気づかれぬようにそっと、
悲惨な人々を助けてきました

いつも、誠実な信仰心で
私の祈りを
聖人たちへ捧げてきました

いつも、誠実な信仰心で
祭壇へ花を捧げてきました

この苦悩の時に
なぜ、なぜです、主よ、
なぜ、私にこのような報いを与えるのですか?

宝石を捧げて
聖母様のマントを飾りました
そして、歌を捧げたのです
美しく輝く、星々、天国にむけて

この苦悩の時に
なぜ、なぜです、主よ
なぜ、私にこのような報いを与えるのですか?

 

この歌詞からトスカは神を愛しており、宝石や歌を捧げるなど行動も伴った信仰深い女性であることが伺えますね。ここまで神を愛しているのにも関わらず、どうしてこんなにも報われないのかと嘆いています。

この「なのになぜ、どうして」という絶望に近い苦悩をプログラムにはっきりと入れることで、スカルピアを刺殺してしまう悲劇が分かりやすくなったと思います。

「歌に生き、愛に生き」をメインに使うことが宮原知子のトスカとして必然であったと強く感じます。このアリアのみ歌声が入っているのも、知子ちゃん演じるトスカが歌っているからというだけではなく、その重要性も関係しているかもしれません。

 

以上でトスカのあらすじと編曲の意図については終わりです。もう飽きた!長すぎ!という言葉が聞こえて来ますが、ここからやっと演技そのものについてお話ししていきたいと思います。

冒頭のポーズ、そしてケリガンスパイラルで滑り出します。3Lz+3Tからまたスパイラルですが、こちらはLFI→LFOのチェンジエッジスパイラルです。最近ではなかなか見ることがなくなりましたが、チェンジエッジの移行が滑らかでとても良いですね。

惑星SW以降は、冒頭ジャンプが3Lo(惑星SW・蝶々夫人)→3S(ブエノスアイレスの冬)→2A(鐘シンドラー)と毎シーズン異なっているのですがトスカは久しぶりに3Lz+3Tスタートに戻りました。声量とコンビネーションジャンプがマッチしていていいですね。

続く2A〜3Loでは音楽に沿ったトランジションが多く、歌い上げるような、伸びやかなスケートがとても魅力的です。3Lo着氷からのランジ、そしてローリー御用達姿勢(知子ちゃんのローリープロに度々出てきます)ですね。

知子ちゃんのFSのエレメンツ構成は、中盤にStSqで終盤にスピンを1つ残してChSqを配置するものが多いのですが(ポエタ、ミス・サイゴン、ため息、惑星SW、蝶々夫人、鐘シンドラーなど殆どのプロがその構成です)このトスカは逆で、中盤にChSqそして終盤にStSqの構成になっています。

「歌に生き、愛に生き」の中の「何故です、主よ」という歌詞がChSqに当てられており、トスカの苦悩が滲み出るようなスパイラルと声量がシンクロします。この歌詞に合わせるためにChSqを中盤に持ってきたのでしょうか?素晴らしいアイデアですよね。バレエジャンプ、滑らかなベスティスクワット(これも頻出ポジションですがプロによって雰囲気が全然違います)、2:07でさりげなく最初のポーズをオマージュしているのもとてもすてきです。アームスの描く曲線が素晴らしいですね。この世でもっとも信頼できるのは知子ちゃんのポールドブラ。

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「歌に生き、愛に生き」は神への絶望なんだけれど、プッチーニは「とっても優しく、深い感情を込めて」と楽譜に書いたそうです。もし自分がトスカならば神を責めるような怒りを込めてしまいそうなのですが、優しく歌い上げることが大事なのだそう。知子ちゃんの「歌に生き、愛に生き」も感情を荒立てることなくソフトで優しいアリアですよね。原作に忠実、音楽に忠実なミス・パーフェクトだからこそ為せるスケートです。

3S〜FCSpとエレメンツが続きますが、見てほしいのがFCSpの出です。スピンをほどいてそのままニースライド。え?そのまま?あまりにスムーズなので難しいことをしているように見えにくいのですが、体幹の強さが伺えますね。

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鐘が鳴り、緊張感が高まります。ここから第3幕の「星は光りぬ」に入ります。トスカの恋人・カヴァラドッシが死刑執行の前夜にトスカへ手紙を書きながら歌うテノールのアリアで、愛と絶望、そして命の惜しさが歌われています。個人的には、FS後半のこのパートはカヴァラドッシが想うトスカの姿というイメージですね。終盤、気持ちを抑えきれず激しく歌うところはラストジャンプの2A+3Tに当てられています。

そこからクライマックスの「急いで!起きて!マリオ!」に移ります。トスカはスカルピアにカヴァラドッシの処刑を空砲にするよう頼んでいたので、彼が倒れたふりをしてしばらくすれば遠くに逃げられるはずだったのです。しかしカヴァラドッシは死んでしまいました。スカルピアの罠でした。そしてスカルピアを殺した罪としてトスカは兵士に追われますが、城の屋上から身を投げます。

つまり壮絶な悲劇と激情がこのStSqに込められているというわけです。知子ちゃんがこれまで滑ったStSqのなかで最も激しくダイナミックで、たった30秒ほどしかないのが惜しくて仕方ありません。

StSqは左足ループ→右足ツイズルロッカーカウンターのクラスターで始まるのですが、トスカの感情が爆発していくさまがよく伝わってきます。

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そのままLSpに入り、ラストのポーズ。おそらく、ディクソン振付ならここはLSpではなく逆回転入りのCCoSpになっていたことでしょうね(笑)

 

 

2021-22シーズン (シニア9年目)

旧SP: ライラ・アンジェリカ

振付 : ジェフリー・バトル

https://youtu.be/b_BalGdkt9g ]

 4月末のBloom on Ice(木下グループ所属選手と木下アカデミー所属選手オンリーのアイスショー)にて、新SPとしてお披露目されたプログラムです。

オルウィンのハープ協奏曲ですが、ミシェル・クワン長野オリンピックで滑った曲としても有名になりました。しかし、その難易度の高さゆえ一度もSPの場で滑ることなくお蔵入りになり、五輪シーズンのSPは2018-19シーズンの小雀に捧げる歌の再演が決まりました。ライラ・アンジェリカは2021-22シーズンのEXとして披露されるようです。

クラシックバレエを基盤とする知子ちゃんが、ここでコンテンポラリーを選んだことにすごく驚いたことを覚えています。鐘シンドラーやグノシエンヌ第1番 / メタモルフォーシスIIでも垣間見ることができましたが、ライラ・アンジェリカこそクラシックを極めた者が自分を開放して意思を描いていく(=コンテンポラリー)プログラムだと思います。

始まりのポージングから何か違和感を感じませんか?鐘シンドラーほど歪ではないけれど、この首の倒し方はクラシックバレエではないとなんとなく感じるような。0:27〜0:30の2つのポジションを見て、「コンテ来た!コンテ来た!うぎゃああ」と一人で大騒ぎしたのをよく覚えています。

0:41の変形アラベスクから3Lzもおしゃれです。無音時にすうっとポーズを差し込むのがとても好き。ライラ・アンジェリカは派手な動きはあまりありませんが、このナチュラルさが良いんです。

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0:50〜の2Aまでのトランジションは曲想にぴったりですね。控えめに挟まれたバッククロスも音楽に溶け込んでいます。溶け込みすぎて、誰もクロスをしたことに気がつきません。

FCSpをほどいてStSq!かと思いきや3Fまでの繋ぎです。初見で騙された方、絶対いるはず!1:27〜1:30の回りながらアティチュードになるところが素晴らしすぎます。素晴らしすぎるので、オルゴールにしてほしいくらいです。

3FからそのままStSqへ。2:08〜からのスパイラル→ロッカーカウンターツイズルループが音楽そのもの。多分知子ちゃんがハープ。振付も素晴らしいし、実施力の高さと音楽解釈の深さも非の打ち所がないですね。

エジプシャン・ディスコと同じでCCoSp〜LSpと最後にスピンが続く構成ですが、このプロもスピン間の工夫がすごく良いんですよね。ランジとアロンジェの組み合わせが絶品です。

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ちなみに7月のDOI頃から小雀に捧げる歌の再演がありましたが、それ以前のBOIやSOIを見るにスピードを出しきれず後半3FがハマっていなかったこともSP変更の要因かもしれません。(単独ジャンプを3Loではなく3Fにしているのは、エジプシャンやグノシエンヌで3Lo失敗が相次いだからかなと推測しています)

 

新SP : 小雀に捧げる歌

振付 : ローリー・ニコル

https://youtu.be/E5_mAtxTtAg ]

2018-19シーズンSPを五輪シーズンに持ってきました。細かいことはすでに書いてあるので、こちらでは変更点について述べておきます。ベースは2019ワールド版で、始まりのポーズ、2A前、CCoSp、StSq、ラストが主な変更です。

右手を左肩に当て、少し左足を曲げたポーズから右手を首の後ろに、左手を右肩に当てたポーズになりました。ちょっとトスカに似ていますね。2A前はより濃い繋ぎになり、バレエジャンプ→小さめダブルバットマン→2Aに変更されています。CCoSpは4つ目がI字になりました。

StSqは2019ワールド版とほとんど同じですが、ベスティスクワット〜右足クラスターの間に左足の足上げが足されました。

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右足クラスターとロングツイズルの間はイナバウワー→ランジになりました。エネルギーが湧き上がるような振付でとても好きです。ポジションの移行もスムーズで素晴らしいです。

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2018-19シーズンに現地観戦が叶わずとても悲しかったのですが、CaOI2021にてついに小雀に捧げる歌を見ることが出来ました!体感1分くらいしかないのに、映画を見終わったような満足感を得られるプログラムでした。SS席から見る知子ちゃんのStSq、本当に素晴らしかったです。

 

FS : トスカ

振付 : ローリー・ニコル

https://youtu.be/v6jxub95XuI ] 

こちらも2020-21シーズンから継続したプログラムです。ついにSP、FS共にローリー・ニコル作品になりました。いま最もローリーの理想を体現しているのは知子ちゃんなのではないかなと感じます。昨シーズンから特に変更点はないので、ジャパンオープン2021の感想をさらっと書いていきます。

ジャパンオープンは初めて3Aをプログラムに入れた試合でした。6分間練習では目の前で3A<両足くらいのものを見ることが出来、本当に感激しました。わたしの夢は、もうすべて叶ってしまいました。

プログラムでは3Lz+3Tの次に3Aが組み込まれており、この日は2Aが3Aに変わるという構成になっていました。3Aを跳ぶにはあまりに助走が短く、しかも右手を上げてから踏切をするので2Aを跳ぶのかと思ったくらいです(笑)知子ちゃんがプログラムの密度に相当こだわりがあることが分かりますね。

本当に、とにかく何もしていない時間や余分な両足滑走がないんです。それもただ動いているだけではなくて音のディテールを動きとして魅せていていて。

オペラ歌手の体は楽器と言われるように、知子ちゃんの体もまるで楽器でした。特に「歌に生き、愛に生き」のパートにおいては、知子ちゃんのスケートがアリアそのもの。

知子ちゃんを見るのはジャパンオープン2019(鐘シンドラー)ぶりだったのですが、スケーティングがさらに進化したなと感じました。StSqはかなり激しく、体幹がきつい姿勢も多いのですがそれでもステップがしっかり伸びているんですよね。StSqの中に一瞬スパイラルが組まれているのですが、クロスもないのにスパイラルでぐいんと伸びるのが本当に印象的でした。(横からというか断面的に見える席だったのですごく分かりやすかったです)

 

ここまで12シーズン分のプログラムについて語ってきたのですが、ここまでお付き合いいただき本当に感謝の気持ちでいっぱいです。なるべく具体的に書こうと努力したつもりなのですが、「なぜ美しいのか」「どこがどう良いのか」など言語化することの難しさを改めて感じました。知子ちゃんのプログラムはどれも素晴らしいので、ひとりでも多くの方にその魅力が届いたならファンとしてこれ以上うれしいことはありません。

 

 

おまけ

最後に、おまけとして知子ちゃんの大会成績リストを作成してみました。ノービスB1年目以降、できる限りすべての大会結果を記しています。思い出を振り返りながら見ていただけたら幸いです。

 

2007-08 (ノービスB1年目)

近畿ブロック 3位

全日本ノービスB  1位

京都府民大会 2位

エイゴンチャレンジカップ 2位

京都市民大会 3位

 

2008-09 (ノービスB2年目)

近畿ブロック 1位

全日本ノービスB 1位

京都府民大会 2位

京都市民大会 1位

 

2009-10 (ノービスA1年目)

西日本中小学生大会 1位

近畿ブロック 3位

全日本ノービスA 4位

全日本ジュニア 4位 (SP4位 / FS6位)

京都府民大会 1位

トリグラフトロフィー 2位

 

2010-11 (ノービスA2年目)

アジアンオープン 1位

近畿ブロック 1位

全日本ノービスA 2位

全日本ジュニア 4位 (SP10位 / FS4位)

京都府民大会 1位

トリグラフトロフィー 2位

全国中学生大会 5位 (SP12位 / FS3位)

京都市民大会 1位

 

2011-12 (ジュニア1年目)

JGPポーランド 2位 (SP2位 / FS2位)

JGPイタリア 5位(SP7位 / FS3位)

西日本ジュニア 1位 (SP1位 / FS1位)

全日本ジュニア 1位 (SP1位 / FS1位)

全日本選手権 6位 (SP15位 / FS3位)

全国中学生大会 1位 (SP1位 / FS1位)

世界ジュニア 4位 (SP4位 / FS6位)

 

2012-13 (ジュニア2年目)

アジアントロフィー 1位 (SP1位 / FS1位)

JGPアメリカ 1位 (SP1位 / FS1位)

JGPトルコ 3位 (SP6位 / FS2位)

近畿ブロック 1位 (SP1位 / FS3位)

西日本ジュニア 1位 (SP1位 / FS1位)

JGPファイナル 5位 (SP5位 / FS5位)

全日本ジュニア 1位 (SP1位 / FS1位)

全日本選手権 3位 (SP3位 / FS3位)

全国中学生大会 2位 (SP5位 / FS2位)

世界ジュニア 7位 (SP6位 / FS8位)

 

2013-14 (シニア1年目)

アジアントロフィー 1位 (SP1位 / FS1位)

近畿ブロック 1位 (SP1位 / FS1位)

NHK杯 5位 (SP6位 / FS5位)

ロステレコム杯 5位 (SP5位 / FS5位)

全日本選手権 4位 (SP4位 / FS5位)

四大陸選手権 2位 (SP4位 / FS2位)

世界ジュニア 4位 (SP4位 / FS4位)

ガルデナ杯 1位 (SP1位 / FS2位)

 

2014-15 (シニア2年目)

CSロンバルディア杯 1位(SP1位 / FS1位)

ジャパンオープン (FS2位)

スケートカナダ 3位 (SP4位 / FS3位)

NHK杯 3位 (SP4位 / FS2位)

全日本選手権 1位 (SP2位 / FS1位)

四大陸選手権 2 位 (SP1位 / FS2位)

世界選手権 2位 (SP3位 / FS4位)

国別対抗戦 5位 (SP6位 / FS3位)

 

2015-16 (シニア3年目)

USクラシック 1位 (SP1位 / FS1位)

ジャパンオープン (FS2位)

スケートアメリカ 3位 (SP3位 / FS3位)

NHK杯 1位 (SP1位 / FS1位)

GPファイナル 2位 (SP4位 / FS2位)

全日本選手権 1位 (SP1位 / FS1位)

四大陸選手権 1位 (SP1位 / FS1位)

世界選手権 5位 (SP6位 / FS3位)

チームチャレンジカップ (SP3位 / FS2位)

 

2016-17 (シニア4年目)

USクラシック 1位 (SP1位 / FS1位)

ジャパンオープン (FS2位)

スケートカナダ 3位 (SP5位 / FS3位)

NHK杯 2位 (SP3位 / FS2位)

GPファイナル 2位 (SP3位 / FS2位)

全日本選手権 1位 (SP1位 / FS1位)

四大陸選手権 棄権

冬季アジア大会 棄権

世界選手権 棄権

 

2017-18 (シニア5年目)

CSフィンランディア杯 棄権

NHK杯 5位 (SP6位 / FS6位)

スケートアメリカ 1位 (SP1位 / FS1位)

GPファイナル 5位 (SP3位 / FS5位)

全日本選手権 1位 (SP2位 / FS1位)

四大陸選手権 3位 (SP1位 / FS3位)

平昌五輪団体 (SP4位)

平昌五輪個人 4位 (SP4位 / FS4位)

世界選手権 3位 (SP3位 / FS3位)

 

2018-19 (シニア6年目)

USクラシック 1位 (SP1位 / FS1位)

ジャパンオープン (FS3位)

スケートアメリカ 1位 (SP1位 / FS1位)

NHK杯 2位 (SP1位 / FS3位)

GPファイナル 6位 (SP6位 / FS6位)

全日本選手権 3位 (SP1位 / FS4位)

バヴァリアンオープン 1位 (SP2位 / FS1位)

世界選手権 6位 (SP8位 / FS6位)

 

2019-20 (シニア7年目)

USクラシック 1位 (SP1位 / FS2位)

ジャパンオープン (FS4位)

中国杯 2位 (SP2位 / FS3位)

ロステレコム杯 4位 (SP6位 / FS4位)

全日本選手権 4位 (SP2位 / FS4位)

バヴァリアンオープン 1位 (SP1位 / FS1位)

世界選手権 中止

 

2020-21 (シニア8年目)

スケートカナダ 中止

全日本選手権 3位 (SP6位 / FS3位)

世界選手権 19位 (SP16位 / FS19位)

 

2021-22 (シニア9年目)

サマーカップ 2位 (SP6位 / FS2位)

CS オータムクラシック 棄権

ジャパンオープン (FS6位)

東京ブロック 1位 (SP1位 / FS1位)

スケートアメリカ 7位 (SP8位 / FS6位)

イタリア杯 5位 (SP4位 / FS5位)

 

 

当アカウントは、これからも宮原知子さんとすべてのスケーターを応援します。この記事をお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

Rein @Icyblossoms

 

 

 

 

 

 

Satoko Miyahara on Tokyo and Beijing(Aug.25.2021)

こんにちは!

ISUのポッドキャスト、"The Ice Skating Podcast"に宮原知子選手が出演!とのことで該当部分を和訳してみました!

だいぶ意訳になっていますが、ご興味ある方は読んでいただけたらなと思います。

 

私はGoogle Podcastを経由して聞きましたが、Spotifyからでも聞けるようです。

 

ISUのツイートからのリンク 

isu.org

Google Podcastからのリンク

podcasts.google.com

 

"Satoko Miyahara on Tokyo and Beijing"  18:40〜35:00

 

Interviewer01:

皆さん、こんにちは!国際スケート連盟がお届けするアイススケートポッドキャストへようこそ!私はルーク・ノーマンです。今日は日本女子フィギュアスケートのエースである宮原知子選手がこのポッドキャストに登場します。東京五輪から北京五輪に注目が移り変わる中で、才能溢れる宮原選手がインタビューに適役でしょう!彼女は来年2月に開催される北京五輪でメダル獲得を狙っています。そしてまた、宮原選手は日本で開催された夏季五輪も楽しんでいたようです。オリンピアンの視点から見るオリンピックというものは本当に魅力的でした。

 

Interviewer02:

知子も私たちと同じように、オリンピックで行われたさまざまなスポーツに夢中になっていました。これまで見たことがなかった卓球やバスケットボールを見ていたようです。東京五輪での日本人選手たちの素晴らしい成功はすでに2つの世界選手権メダルを獲得している知子のモチベーションに火をつけました。

 

Interviewer01:

世界トップのアスリートが時間を割いてポッドキャストに参加してくれていることに心から感謝しています。

 

Interviewer02:

はい、フィギュアスケートの真のロイヤリティ、そして”Tiny Queenとしても誰もが認める日本の宮原知子選手です!

 

Interviewer01:

同時に彼女は魅力的なインタビュイーであり、とても正直でオープンに応じてくれました。

 

Interviewer02:

彼女が氷上で最大のライバルにどのように対処しているかについて聞けることを本当に楽しみにしています。

 

Interviewer01:

はい。興味深いですね。先ほどのインタビュー(同時に収録されていたクリスティン選手のインタビュー)にもありましたが、非常に高いレベルで戦っているアスリートも全ての人間と同じように、緊張や自信をなくすことに苦しんでいます。そしてここに、最も確立され成功したフィギュアスケーター1人である宮原知子選手がいます。

 

Interviewer02:

過去のシーズンを振り返ると、知子はそれに対処する方法を見つけているように感じます。

 

Interviewer01:

アスリートたちがこの種の問題に取り組んでいますが、解決へのアプローチは様々ですね。そして、彼女のフリープログラム「トスカ」と新しいショートプログラム「小雀に捧げる歌」の最新情報を入手しました。それではインタビューに移りましょう。まず夏季オリンピックが日本で行われているのを見るのはどんな感じだったかを尋ねて見ました。

 

Satoko Miyahara:

普段は他のスポーツを見ないのですが、たくさんの種目があったので、見ていてとても楽しかったです。東京五輪は特別な時間を過ごせました。

 

Interviewer01:

私も数年前のロンドン大会を思い出すよ。今まで見たことのないようなスポーツは見た?

 

Satoko Miyahara:

1つだけ選ぶことはできないのですが、卓球、バスケットボール、水泳です。どれも本当に素晴らしかったので選べません。

 

Interviewer01:

そうだね、分かるよ。日本選手団はたくさんのメダルを獲得して大成功を収めたよね。 テレビを見たり、金メダルを獲得したニュースを聞いたりするたびワクワクした?

 

Satoko Miyahara:

そうですね、自分自身についても考えるような機会でしたし、オリンピックをリアルタイムで見れたことでモチベーションにも繋がりました。

 

Interviewer01:

なるほど!オリンピックの期間中はトレーニングをしていたのかな? 氷の上やジムでトレーニングするときもモチベーションを保てそうだね。

 

Satoko Miyahara:

オリンピックの期間中はアイスショーに出演していました。モチベーションがすごく上がった状態で滑ることができました。

 

Interviewer01:

そして今、世界の視線が2022年の北京五輪に向けられているね。知子は北京五輪に向けていまどう思ってる?

 

Satoko Miyahara:

今は本当にワクワクしていますが、北京五輪のことをいつも辛抱強く考えているわけではありません。毎日、自分にできることをこなし楽しみながら練習すれば、いい方向に繋がると思っています。うまく言えなくてすみません。うまくいけば、それが北京五輪に繋がるかもしれないので、本当にその瞬間を楽しもうと考えています。

 

Interviewer01:

2018年の平昌五輪と同じアプローチなのかな?それとも、五輪を経験して変わった?

 

Satoko Miyahara:

大きな怪我(左股関節の疲労骨折)をしたので、平昌五輪へのを道のりは少し大変でした。 ですから、怪我を治すことに集中していて他のことについて考える時間がありませんでした。今とはまったく違うアプローチですね。

 

Interviewer01:

なるほど、これからがとても楽しみだね。24年前と比べて今は健康的だから考え方も異なるんだね。

 

Satoko Miyahara:

そうですね、どちらも私ですが、全く違うような考えです。 34年前と比べて本当に違うので、北京五輪に向けて何か新しいことができるかなと思います。

 

Interviewer01:

それは素晴らしいね。次はプログラムに関して聞いていきたいんだけど、どの部分に力を入れて取り組んでいるの?

 

Satoko Miyahara:

何度もプログラム全体を練習しています。ディテールを磨く時は部分的に練習したりもしますが、音楽をかけた通し練習で良いジャンプを飛べるように集中しています。

 

Interviewer01:

「トスカ」の好きなところを教えてもらえるかな。

 

Satoko Miyahara:

本物のオペラを見たことがないのですが、「トスカ」の映画版を見ました。この物語も、もちろん音楽も大好きです。特にステップシークエンスで使っている力強くなっていくパートが気に入っています。この音楽に乗せて、また違った自分を見せられたらいいなと思います。

 

Interviewer01:

知子の「トスカ」を見れる日が待ちきれないよ!「小雀に捧げる歌」についても話が聞きたいね、新しいショートプログラムはどう?

 

Satoko Miyahara:

「小雀に捧げる歌」はすごく気に入っているショートプログラムです。音楽がかかった瞬間からスピードに乗ることができるし、特別な瞬間なんだと感じるんです。このプログラムが私に喜びをもたらしてくれるのと同じように、私も演技を見ていただいたすべての方とこの喜びを分かち合えればな、と思います。

 

Interviewer01:

まったくその通りだね。振付師のローリー・ニコルとはどう?

 

Satoko Miyahara:

今は日本にいるので以前のようにコミュニケーションを取るのは難しいのですが、ZOOMで行うレッスンの時にはローリーが「知子の素晴らしいスケーティングを見せて!」と言ってくれます。しっかりと氷を押して、スピードを出し、大きなスケートをしようと心がけて滑っています。

 

Interviewer01:

知子が北京五輪の出場権を争う上で、そして北京五輪のメダルを狙う上で最大のライバルになるのは誰になりそう?

 

Satoko Miyahara:

選手みんなです。オリンピックに出場するアスリートは特別で、とても強く、そして誰もが一生懸命練習しています。 ただ、最大のライバルは私自身です。自分自身に勝ちたいです。

 

Interviewer01:

なるほど、興味深いな。自分に勝つためにはどうする?

 

Satoko Miyahara:

私は試合になるといつもものすごく緊張してしまって、練習とはまるで別人になってしまうんです。練習しているときはプログラム全体をうまく滑り切れますが、最近は試合はいつでも足が本当に震えてしまうんです。私じゃない誰かが滑っているみたいで。なので、一番のポイントは自分が感じていることを和らげることだと思います。これまで、次、次、次と焦って考えがちだったのですが、コーチの助けも得ながら断ち切りました。そして、私は自分自身を鼓舞したり、上手に滑ろうと考えすぎるとうまくいかないことも分かってきたんです。その瞬間それぞれを楽しんでいくことが、良い滑りにつながると今は考えています。

 

Interviewer01:

知子が緊張に打ち勝つ力と技術があることは見ていてよく分かるよ。

 

Satoko Miyahara:

最近は今何をすべきかを意識することを心がけています。練習だけでなく、普段の実生活でも同じように考えています。例を出すなら、そうですね、今はポッドキャストで話しているので、話すことだけを考えています。 そういう感じで毎日脳を鍛えています。

 

Interviewer01:

今必要なことに焦点を当てているんだね。それってすごくきついよね、ものすごく疲れるよ。

 

Satoko Miyahara:

そうですね、きついです。

 

Interviewer01:

緊張をうまく対処するのは本当に大変だよね。緊張すると、体にも何か異変は起きる?

 

Satoko Miyahara:

そうですね、足に異変を感じます。言葉で説明するのは本当に難しいのですが、くすぐったいというより足がぶるぶると震えてしまいます。氷を掴もうとしても足が震えてしまう瞬間が本当に嫌です。すごく緊張するといつもそうなってしまいます。ただ、緊張に勝てるようなアプローチを見つけることができると感じていますし、そうなれば良い滑りに繋がるとも思っています。

 

Interviewer01:

試合でうまく調整していけると良いよね。試合までのプロセスがうまくいって、よりリラックスして試合に臨めると、自分を見せることができる。

 

Satoko Miyahara:

そうですね。試合だけでなくアイスショーも、落ち着いて臨める方法を見つけることができるすごく特別な機会です。今シーズンはできる限りたくさんの試合に出たいと思っています。

 

Interviewer01:

応援しているよ!チームメイトの紀平梨花選手について少し教えてくれるかな。彼女はどう?何が彼女を特別な存在にしてるんだろう。

 

Satoko Miyahara:

梨花ちゃんはすごく可愛くて、 おしゃべりするのも楽しいです。 梨花ちゃんは自分の体の状態を管理することに長けていると思います。なのでよく梨花ちゃんを見てしまうし、その能力を羨ましくも思っています。

 

 

アフタートークを聞く限りでは、紀平梨花選手だけでなく羽生結弦選手についての質問もあったようです。(実際の放送ではカットされていました)

知子ちゃんのパートは「心から成功を祈っているよ」「知子の進化をしっかりと見届けたい」の言葉で締めくくられていました!

 

それにしても、英語でポッドキャストに参加できるとはさすが知子ちゃんです。プレカンでも常に英語でやりとりをしていますが、15分以上もインタビューに答えることができるのは本当に凄いです。

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宮原知子選手、今シーズンも応援しています!

#soaronsatoko

 

 

 

 

 

 

 

 

Ashley Wagner details ‘severe depression’ after nationals (Oct.11.2018)

NBC Sportsさんのアシュリー・ワグナー選手インタビュー記事を翻訳しました。五輪代表落選後について。

 

原文

olympics.nbcsports.com

 

 

 

アシュリー・ワグナーは全米選手権で4位となり、平昌五輪の代表落選。その後深刻なうつ病に陥り、専門家の助けを受けた。

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「私はベッドからほとんど出ることができなかった。全く動くことができなかったの」とワグナーは世界精神保健デーの水曜日、インスタグラムのストーリー機能でそう話した。 

「日を追うごとに、まるで何かと闘っているような感じで。はじめの頃は、自分自身に深く失望したの。トップアスリートとして軌道を外れてしまって、自分のスケートが世界でどれくらいのレベルに位置しているのか、自分の価値感覚を分かってしまったから」

 


「私はアスリートとして、大会でどれほど成功したかということと自尊心を結びつけるのはとっても簡単だと思っているの。私は友人や家族にそのことについて、そして私の感じ方や自尊心の低さについて打ち明けた。とにかく、私は自分の気持ちをとても気にしていたから、自分の心を対処する手伝いを頼むための専門家を友人や家族が勧めてくれて。

要するに、あなた自身の心を決して疑わないでほしい。きちんとしたステップがあり、それさえ踏めば、より良くなることも疑わないで。私自身はプロの助けを借りたおかげで今はまったく別の場所にいます。私は確かに100%の状態ではないけれど、状態は日々快方に向かっているの。何故かって、私が最終的に助けを求めたところについに自分自身を改善するためのものを手に入れることに成功したのだから」

 


ソチオリンピックの団体銅メダリストのアシュリー・ワグナーは、シニア選手になって11年目の今シーズンに、初めての休養を取っている。今秋のグランプリシリーズも欠場するが、彼女が今後競技に戻るかどうかは不明だ。

 


「昨シーズンの精神障害の後、今シーズンの休養を決めました」と、6月にワグナーのインスタグラムに掲載された。

「スポーツに対する情熱はいつだって燃えているけれど、11シーズン後も経てば少し休憩しても良いでしょう。私は日々練習し続けているけれど、私はスケートが自分にとって何を意味するのか、その定義を考えているの」

 


ワグナーは、アメリカ代表の女子選手として、もっとも活躍した選手だ。2016年のボストン世界選手権では銀メダルを獲得し、この12年間でオリンピックまたは世界選手権のメダルを獲得した唯一のフィギュアスケーターである。さらに彼女は3度の米国チャンピオンに輝き、3つのGPファイナルのメダルを獲得、また5つのGPシリーズで優勝している。

 

 

アシュリー…こんなことになっていたのんて。五輪の解説やコメントもつらかっただろうに、選手への優しい言葉ありがとう。団体SPのときに、知子ちゃんのことをすごく褒めてくれたのが本当に嬉しかった。きっと知子ちゃんもみんな嬉しかった。

アシュリーが銀メダルを獲得したボストンワールドの、最後の3Lzが決まった瞬間を忘れることは永遠にありません。

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Rein

@Icyblossoms

I choose to skate(Sep.4.2018)

 Golden Skate さんの記事の翻訳になります。ロシア代表、セルゲイ・ヴォロノフ選手についての記事です。ハンカチをご用意の上、お読みください。

 

原文

bit.ly

 

 

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 来たる2018-19シーズンのGPシリーズのアサインリストにロシア代表セルゲイ・ヴォロノフの名前があったことに驚いた人も、おそらく少なくないだろう。多くの人は彼が30歳という年齢でこのキャリアを続けるとは予想しなかっただろうし、さらにヴォロノフは昨年12月のロシア選手権でオリンピック代表の4度目の落選を味わっているのだ。しかしながら、ヴォロノフはトレーニングと大会に出場し競い合うことを選び現役続行を決意した。

「私には考える時間がありましたから」ヴォロノフはそう言った。「私はやりたいことや他者からのアドバイス、自分に必要なことや必要でないこと、自分の気持ちに素直に従って続行を決めたのです。私は自分自身でこれからを選ぶことができたこと、そしてまだ滑ることを選んだということが嬉しいです」

 2年前から彼のコーチだったインナ・ゴンチャレンコがCSKAモスクワを去ったため、ヴォロノフはコーチ変更を余儀なくされた。彼はCSKAに残り、現在トレーニングを行なっているエレーナ・ブイアノワへの師事を決めた。

「私はCSKAに残ることができて幸せですし、エレーナ・ゲールマノヴナ(・ブイアノワ)が彼女のチームと一緒に練習を積むことを認めてくれて本当に感謝しています」と、ヴォロノフは話した。

「コンディションはかなり良いですね。エレーナは私にたくさんのことを教えてくれるし、スケート技術や練習についての価値あるアドバイスもくれます。彼女に何か修正するよう言われると、正直なところ、本当に申し訳ないんだけれども文句を言いたくなるときもありますが。彼女との練習は良い影響を受けます。とても良いものだし、本当に楽しんでるんですよ」

 

 昨季のGPシリーズのファイナリストであるヴォロノフはプログラムを作るため、新しい振付師も探していた。そして彼は5月の終わりにデニス・テンの振付を受けるためカザフスタンへ訪れた。

「デニスに頼もうと言 いうのは、自分の決断です」ヴォロノフは想起していた。

「私はフリープログラムで何か新しくて、いつもとは違うものを作りたかったんです。インスタグラムを見ているとき、しばしばデニスが出版した本を見かけました。そして思ったのです、『デニスに頼んだらどうだろう』と」

 ヴォロノフデニス・テンに連絡を取ったが、テンはヴォロノフにフリープログラムの依頼をされて驚いたという。

「『君のプログラムを台無しにしてしまうよ』とデニスは言ったんです。だから私は確信を持ってこう答えました。『いいや、デニス、君は台無しになんかしないさ。これはおだててるんじゃないよ。デニスならやってくれると確信してるんだ』」

 ヴォロノフカザフスタンへ行った際、すでに曲の候補があったがテンはカレオの”Way Down We Go”はどうかと提案した。

「私は別の選択肢もあると言ったけれど、デニスが私を納得させてくれて、今は本当に感謝しています。だって、もしその曲を選ばなかったら私はひどく後悔したでしょう。そうなっても私は手紙も書けないし、『デニス、君が正しかったんだ』なんて言えないのだから」

「私たちは興味深く、独創的な議論を交わしました。私が譲歩したけれど、今では彼がどれほど正しかったのかが分かります。彼は編曲もしてくれました。フリープログラムの全てを彼が作り上げたのです。このプログラムより素晴らしいものは出てこないだろうと思うほどでした」

 そして明らかに、7月19日の悲劇的なデニス・テンの死からこのプログラムは特別な意味を持っている。

 

「正直に言うと、このプログラムを滑るときいろいろなことを考えてしまうんです」とヴォロノフは説明した。

「まずはじめに音楽。この曲には歌詞がありますが、その意味を理解したとき運命を感じるのです。私は本当にこの曲をデニスが私に選んだくれたこと、彼に振付をしてもらえたことに感謝しています」

 ヴォロノフはテンが振り付けた、ただ1人のフィギュアスケーターだ。「本当に遺憾だけれども、彼は私しか振り付けられなかったんです」2度のロシアチャンピオンに輝いたヴォロノフはそう指摘した。

「おそらく、私が今何よりも大切なのは、このフィギュアスケート界だけでなく私が滑るところすべてでデニスがどれだけ才能に溢れた人だったかを伝えることなのです」彼は続けた。

「彼は有名で結果を残したアスリートというだけではなく、振付師でもあるのだということです。デニスは彼らしさと彼にしかない素質を持った人間で、深い知性を備えていて、そして私を信じてくれるのです。信じてくれることはフィギュアスケートという競技では本当に重要なことです」

「もう一度言いますが、お世辞を言っているのではありません。私は彼を心から尊敬しています。デニスの演技からはたくさん学ぶことがありますから、私はよく彼の演技を見ていたのです」

 

 そして、ショートプログラムはシークレットガーデンのAppassionataで、これは彼が選んだ曲だ。アルトゥール・ガチンスキーによって振付されたこのプログラムはマキシム・ザヴォジンも協力しており、シーズンに向けて磨いている。

 

 2017年のNHK杯の覇者であるヴォロノフの夏は、新たなシーズンに向けての準備で忙しかったようだ。プログラムを作り、ギリシャで休暇を過ごしたあとはイタリアのクールマイユールでトレーニングキャンプを行った。

「この町を好きになってしまいました。60歳や70際になったらここで余生を過ごしたいですね」と彼はおどけて見せた。

「実りの多い夏でした。私は全てに取り組みました。プログラムやスケーティング技術、スピン、そしてジャンプ。それぞれのシーズンは始まりから終わりまで経験していますから、音楽や他の考えも心に留めておきます」

 7月の終わり、ヴォロノフは日本のアイスショーに参加し、とても楽しんだと言う。「日本は最高ですよ。他の国では感じられないような暖かさを感じますから。そして、ショーの仲間たちと有名な大阪や京都にも行きました。とても楽しくて、良い経験になりました」とヴォロノフは言った。

 彼はネイサン・チェンやアイスダンスのガブリエラ・パパダキス、ギヨーム・シゼロン、そして同じくロシア選手のアリーナ・ザギトワやドミトリー・アリエフらと楽しい時間を過ごした。

 ヴォロノフは現在、モスクワで行われるロシアナショナルチームのテストスケートを控えている。彼が新プログラムをテストスケートでロシアのスケート連盟に初披露するのは9月9日の予定だ。

 ヴォロノフはGPシリーズのスケートアメリカNHK杯に参戦する予定であるほか、オンドレイ・ネペラ杯や国内戦であるロシアカップの出場も予定している。

 

 

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 「君が正しかったんだ、なんてもう今じゃ言えないから」

 この一言に、涙が出ました。セリョージャ自身、本当に辛かったはずです。でも彼は、懸命に前向きに遺されたプログラムと向き合ってくれました。だから完成して日も浅いながらもTHE ICEで滑ってくれたのだと私は思います。そしてきっとデニスは、いつでもセリョージャを信じているはずだから。だってセリョージャがまだ滑ってくれるのだから。

 

 

 最後に、セリョージャもコメントしていたWay Down We Goの歌詞です。

 

Father tell me, we get what we deserve
Oh we get what we deserve
And way down we go
Way down we go
Say way down we go
Way down we go
You let your feet run wild
Time has come as we all oh, go down
Yeah but for the fall oh, my
Do you dare to look him right in the eyes?
'Cause they will run you down, down til the dark
Yes and they will run you down, down til you fall
And they will run you down, down til you go
Yeah so you can't crawl no more
And way down we go
Way down we go
Say way down we go
'Cause they will run you down, down til you fall
Way down we go
Oh bab-bab-yeah
Wow baby
Baby
Bab, down we go
Yeah
And way down we go
Way down we go

Say way down we go
Way down we go

 

 

 

Rein @Icyblossoms

 

平昌五輪ゆるっと観戦記(Feb.28.2018)

 平昌五輪の女子シングルフリーを見に韓国へ行ってきました!

 全て自費を条件に、大学生ひとり旅(超弾丸日帰り旅行でしたが)の両親から許可をもらいました。門限には厳しいわりに娘がひとりで海外に渡航するのには寛容でした。不思議だけどありがたい。

 

 しかし、いくらバイトで稼いでいるとはいえ所詮は学生。しかも夏からは大学の協定留学も控えていて、給料はほとんどアメリカでの生活費のための貯金へ回っている状況。なので、高騰していた宿代を出すことができませんでした。そこでLCCPEACHさんの弾丸スペシャルを利用することにしました!

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2/23 (金)

01:55 羽田空港発(PEACH)

04:35 仁川国際空港

06:00 仁川国際空港T1発(高速バス)

07:40 忘憂駅着

07:45 忘憂駅発(京春線電車)

07:48 上鳳駅着

08:05 上鳳駅発(KTX)

09:35 江陵駅

 

16:30 江陵駅発(KTX)

19:00 仁川国際空港

22:45 仁川国際空港発(PEACH)

00:55 羽田空港

 

 

 アイスアリーナ最寄りの江陵駅まではこんな流れで行きました!かなりキツいタイムスケジュールなのにもかかわらず、道中トラブル続出だったためアイスアリーナにたどり着けないのでは、と諦めかけたときもありました(笑)

 

 ちなみに仁川国際空港内は英語はもちろん、ほとんど日本語表記もされていました。なので私のようにハングルの知識皆無でも大丈夫です。さすがハブ空港

 

  しかし!空港から一歩外に出ると、もう日本語はありません。韓国の交通機関の知識もない私は、バスのチケットを買うのになんと約45分間を要しました。

 チケット売り場のおばさんにKTX乗車予定の上鳳駅に行きたい!と告げたところ、「はあ?そんな駅ないわよ」とまさかの返答が。そんなわけあるかーー!!と反論しますが、ハングルばかりの路線図を突きつけられます。いや、読めんて、それ。

 頭を抱えた私は、以前カナダで出会った韓国人の友人に慌てて連絡しました。そうすると、見事に秒返信が返ってきて#6100のバスに乗れば上鳳駅のひとつ隣の、忘憂駅に行けるよと教えてくれました。彼が返信をくれなかったら、江陵へ行けなかったかも…と思うと恐ろしいです。10万円がパーになるのは恐ろしいですよ。事前リサーチは大切。

 

 そして、忘憂駅行きのリムジンバスに乗り込みます。早朝便だからなのか、車内は真っ暗。これ本当に忘憂駅いけるの?本当に上鳳駅いけるの私?と不安に思うも、終点だからいっかと呑気に100分間爆睡してしまいました。

 無事、バスは忘憂駅に到着しました。そこから地下鉄の京春線に乗るので、シングルジャーニーチケットなるカードを購入しました。デポジット+切符代を支払って黄色いカードを手に入れます。購入機械は韓国語以外にも、英語、中国語、日本語の利用もできました。なんだか久しぶりに日本語を見た気がしてテンションが上がった私は上鳳駅でデポジットを回収し忘れました。さらば500ウォン。しかもカードの返却まで忘却。すみません。

 

 忘憂駅から上鳳駅までは3分くらい。無事にKTXにも乗ることができました。通路側だったのでいい写真は取れませんでしたが、挟んであったパンフレットにはユナ・キム氏が載っていました。途中で雪が積もっているので除雪しまーすというアナウンスがあり、少し遅延。窓から見えた雪景色が綺麗でした。

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 江陵駅はとても大きくトイレも清潔な印象を受ける駅でした。テレビではアリーナ・ザギトワ選手のSPが放映!五輪オブジェに乗っての写真も撮って頂きました。

 

 ここで時刻を確認すると09:45。間に合わないことに気づき、シャトルバスを探しますがなかなか見つかりません。そこで登場したのが、宗教団体のおばさん。めちゃくちゃ勧誘されたんですが、ちょっとそれどころじゃないの!シャトルバス知らない!?と聞いたところ一緒に探してくれました。優しいですねえ。標識を見てあーだこーだ言ってるうちに、女子SPも観戦したと言うロシア人のおじさんがあれだよ!とワイルドに教えてくれました。おばさんにお礼を伝え、エフゲニア・メドベデワ選手推しのロシア人とともにバスに乗り込みます。

 そこのテレビに映ったのはアレクシア・パガニーニ選手。もう始まっちゃったねと話しながら演技を見ました。バスがオリンピックパーク前に到着し、降りるとロシア人の方はトイレ行くわ、またねと公衆トイレへ行ってしまいました。

 そこでアリーナまで歩くのですが一向に着かない。またまたこれ本当に着くの?状態になった私をなんとなんと、坂本花織選手のお父さま方が助けてくれました。本当に感謝しています。

 

 お席はG20ゲートのB席!見晴らし良好でした!すごく嬉しかったです。シャンニン・リ選手のライモンダから観ることができました。はじめて海外の大きな大会を観に行ったので、そのスケールの大きさに驚きました。カナダ応援団やロシア応援団、そして地元韓国ファンなどが会場を盛り上げていて、ああこれがオリンピックなんだなと思いました。

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 感想は沢山ツイートさせて頂いたので割愛しますが、オリンピックという素晴らしい大会を観戦することができたことを本当に嬉しく思います。

 

 さて、行きと同じようにシャトルバスに乗り江陵駅へ。帰りはここからKTXです。2時間半の道のりもまた爆睡。泣き疲れたんですね。まるで赤ちゃん。

 

 夜19時、やっと仁川国際空港に戻って楽しみにしていた参鶏湯を食べました!すっごく美味しかったです😊さすが本場の味でした。

 PEACH便をチェックインして、出発ロビーへ向かいます。ここが大混雑していて、なかなか前に進みませんでした。その後、ゲート付近のお店を回ります。なぜなら大量にウォンが余っていたから!5000円分を両替したのですが、全然使いませんでした😭そこでお土産としてまた参鶏湯を購入しました。これぞ爆買い。それと、お店のお姉さんとの英会話がすごく楽しかったです。

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 驚いたことは、LCCなのにPEACHは寸分の遅れもなかったことですね。めちゃめちゃ頼れます。ディレイがないのは安心です。こうして何事もなく私は羽田空港へ帰ってくることができました!

 

人生はじめてのオリンピック観戦、とっても楽しかったです!!

 

本当に長いだけの駄文でしたが、ここまでお付き合い頂きありがとうございました🙏🏻

 

 Rein @Icyblossoms 

 

Comments for Satoko(Feb.27.2018)

 知子ちゃんの平昌五輪での演技、本当に素晴らしかったですね!今回は知子ちゃんへの海外からのコメントをご紹介したいと思います。

 

Satoko Miyahara slayed!

知子は死ぬほど良かった!

 

Satoko Miyahara's free skate...entrancing! I thought she had the gold in the bag. Crazy that a performance like that can't even medal with the competition these days!

宮原知子のFSにはうっとりしたよ!私は彼女が金メダルを取ったと思ったのだけど、この演技でメダルさえ取れないなんてこの大会はレベルが高すぎる!

 

Anyway Satoko Miyahara invented beauty, attention to detail and everything that’s good and pure in this world.

とにかく、宮原知子は美を体現しているよ。細やかな部分まで気を配り、演技全体も素晴らしく、澄み渡っている。

 

Satoko Miyahara is just one of the ideals of feminine beauty and femininity.Her grace, modesty (which contains great strength and power), softness, the ability to behave in.

宮原知子は女性美、女性らしさを象徴する選手のひとりだ。彼女は優雅で、謙虚、そして柔らかい振る舞いをする。

 

Imagine being so graceful on ice, Satoko Miyahara can relate 😍

氷上で優雅な選手といえば宮原知子

 

Satoko Miyahara is my tiny ice queen and her gala was beautiful everything she does is so beautiful I wish people would appreciate her more 😭♥️

宮原知子は私の小さな氷上の女王で、彼女のEX演技はなすこと全てが美しかった。多くの人々が彼女の演技をより高く評価してくれることを願うよ!

 

What I love about Satton's costume is how it is evidently Spanish but the white-red colours with the red flower over the white dress is reminiscent of the Hinomaru (Japan's flag) I think it's brilliant.

私の大好きなさっとんの衣装は、明らかにスパニッシュなんだけれど、白地に赤い花がついている白と赤の配色は日の丸を想起させる。素晴らしいと思うわ。

 

10.00 10.00 10.00 10.00 for Satoko Miyahara. One of the best EX in this year ❤

宮原知子のPCSは全部満点!今年のベストEXのひとつね!

 

Stunning Satoko Miyahara! She deserved more in this world!!!

宮原知子に痺れたよ!彼女はもっと世界に評価されるべきだ!

 

Satoko Miyahara skates so beautifully - wish she could have won a medal! The 3 ladies medalists all deserved to win, but she was perfect too, makes you wish there had been 4 spots on the podium!

宮原知子がとても美しく滑ったので彼女がメダルを取れることを祈ったわ!メダルの3人は全員メダルを取るに値したけれど、彼女もまた完璧だった!表彰台に4つ登る場所があればいいのにって思わせたようにね。

 

Satoko Miyahara is the most beautiful skater in the world and whoever thinks otherwise doesn’t have a clue what good skating is.

宮原知子は誰が何と言おうと、世界で最も美しいスケーターだ。さもないと、上質なスケーティングとは何か分からなくなってしまうよ。

 

I enjoy watching Satoko Miyahara skate more than anyone else, she's just so beautiful and precise.

 他の誰よりも、宮原知子のスケートを見ることを楽しんだよ。彼女は本当に美しく正確だ。

 

Satoko Miyahara was so great and gave me goosebumps!
She is the best skater I’ve ever seen! Great work Satoko! Congratulations!

宮原知子はとても素晴らしくて、鳥肌が立ったよ!彼女は僕が今までで見た中で最高のスケーターだ!よくやったよ知子!おめでとう!

 

グレイシー・ゴールド選手より

Satoko was one of my favorite girls to compete against. So sweet and always brought her A game.

 知子は同じ競技で競い合う、お気に入りの女子選手のひとり。とても可愛らしくて彼女はいつも試合で最高の演技を見せてくれる。

 

Satoko is so refined and well trained. Each movement has a purpose. Not to mention her packaging is divine.

知子はとても洗練さていて、よく練習を積んでいるのね。どの動きにも意味があるの。彼女の演技は神がかっていて言うことなし!

 

アシュリー・ワグナー選手より

 I love this program for satoko. It keeps her beautiful and elegant but makes her sharp and strong as well.

 私は知子のこのプログラム(SPのSAYURI)大好き!このプロは彼女を美しく、上品に見せるけれど、それだけでなく鋭く強くも見せるの。

 

マディソン・チョック選手より

Wow Satoko! Soooo much respect 👏🏼👏🏼👏🏼 

わお、知子!本当に尊敬する!

 

グラント・ホクスタイン選手より

My girl just killed it!!! Satoko!!!!!! 

やりきったよ!知子!!!

 

ジェレミー・アボット氏より

Satoko knows 👏🏼 how 👏🏼 to 👏🏼 skate 👏🏼 she’s so fluid and her edges are exquisite. She has studied figure skating and her quality exudes that knowledge!

知子はどのように滑るべきなのか知ってるよ👏🏻👏🏻彼女はとても流動的で、エッジさばきもこの上なく美しい。知子はフィギュアスケートという競技をよく研究しているし、彼女の高質な演技に表れているね。

 

ディック・バトン氏より

Miyahara- Good speed, good opening jump, little arm movement. Miyahara reverse spin unusual and difficult. Miyahara doesn't have worthless arm movement. Miyahara Good layback.

宮原は良いスピードで良い始めのジャンプ。逆回転スピンは非常に珍しく、高難度のものだ。彼女の所作に無駄な動きは一切無い。レイバックスピンも良質だ。

 

振付師トム・ディクソン氏より

Having worked with Satoko for 7 years, there isn’t one second in any of those programs where she ever sacrificed the choreography for a jump. Granted, she’s not doing the triple axel but she’s been doing triple-triples since she was 11.

知子とはもう7年も仕事をしているけれど、彼女がジャンプのために振付を疎かにしたことはただの一度もない。3Aこそないが知子は11歳の頃から3回転3回転を跳んでいるにもかかわらずね。

 

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(関大スポーツさんよりお借りしました)

 SNSやインターネット上には知子ちゃんへの賛辞が溢れていました。これらはごく一部ですが、とても嬉しいですね。

 

 オリンピックという夢の舞台で、渾身の演技。そして、大きなガッツポーズと笑顔が咲きました。メダルという観点で言えば悔しさもあるとは思いますが、ファンとしてこのような演技を見ることが出来たことは本当に幸せです。

 また、ナショナルを勝ち抜いた各国選手のスケートを現地で観戦出来、こみ上げるものがありました。最高のオリンピックだったなと思います。

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ありがとうございました。

Rein @Icyblossoms